真のハラスメントの定義とは?

前回、

「ハラスメントは“不快”ではなく“構造”の問題だ」

という話をしました。


今回は、もう一歩踏み込みます。


多くの人が混乱している理由は、

ハラスメントの定義が、あまりにも曖昧なまま使われているからです。


不快だったらハラスメント。

嫌な気持ちになったらアウト。

そういう理解が広がるほど、

人は「何も言わない」「関わらない」方向へ傾いていきます。


しかし、それは本当に

被害者を守ることにつながっているのでしょうか。


真のハラスメントとは何か


ハラスメントとは、単なる失言や相性の悪さではありません。


本質は、

立場・権力・関係性の差を利用して、

相手の拒否権を奪う行為です。


次の3つが重なったとき、

それはハラスメントになります。


① 立場の非対称性

上司と部下等の

「断りにくい関係」であること。


② 拒否しづらい、または拒否できない状況

断れば評価が下がる等の

こうした“圧”が存在していること。


③ 継続性、または強要性

一度ではなく、

繰り返される

断っても止まらない。


この3点がそろったとき、

言葉や行為は「指導」や「冗談」ではなく、

支配や暴力に変わります。


逆に、ハラスメントではないもの


ここを整理しない限り、

社会は萎縮し続けます。


・対等な立場での意見の衝突

・一度の失言や言い間違い

・訂正や謝罪が可能なコミュニケーション

・拒否したら関係が是正される状況


これらは

不快に感じることがあっても、

原則としてハラスメントとは別の領域です。


すべてを同じ枠で処理してしまうと、

「言葉を交わすこと」そのものが

リスクになってしまう。


なぜ定義を明確にする必要があるのか

理由は単純です。


曖昧な定義は、

本当に守るべき人を守れなくなるから。


境界線がぼやけるほど、

深刻なケースは

「よくある話」に埋もれてしまいます。


一方で、

軽微な行き違いや未熟な言動まで

過剰に糾弾されると、

現場は沈黙します。


結果として、

・相談が減る

・指摘ができない

・問題が水面下に潜る


ハラスメントは、

見えなくなるだけで、

消えません。


被害者を守るために必要な視点


被害者を守ることは、

絶対に揺るがしてはいけない前提です。


ただし、

守るとは「すべてを遮断すること」ではありません。


必要なのは、

・定義を明確にする

・行為に焦点を当てる

・構造を改善する

・味方や理解者を増やす

最後に


ハラスメントをなくすために、

言葉を恐れる社会を作ってはいけません。


必要なのは、

「何が許されず、何が話し合えるのか」

その線を、

社会全体で共有することです。


次回は、

「昭和・平成・令和で何がどう変わったのか」

時代背景の違いから、

この問題をさらに掘り下げていきます。