その島は
日本海に浮かぶ
周囲2キロメートルの
小さな島
周りを切り立った
崖が
取り巻き
人を容易に
近づけない
むろん 無人島である
過ってこの島は
全島が橅の木で
覆われていた
しかし一本の古木を 除いて
すべて枯れ死してしまった
今はそのブナの古木を
取り囲むように
タブの木が
繁殖している
人はこの島を
橅の島
と呼ばず
神の島と
畏敬の念を
持って
よんでいる
ブナの古木は
周囲の他のブナの木を
その根から出る毒で
すべてからし
自分のテリトリーの
直径300メートルの範囲は
何物も侵入させなかった
だから タブの木も
リング状に
橅の古木を取り囲んで
内側には
絶対入れない
航空写真で見ると
はっきりと
中心に橅の木があり
300メートル外側に
リング状に丸く
円を描くように
タブの木が
島の外周まで
茂っている
ブナの古木は
直径が根元で4メートルあり
推定800年の樹齢だそうだ
ブナの木は
日本の固有種
他の国には無い
それもごく一部の地区に
生息するのみとなり
保護しないと
絶滅の恐れがあるんだそうだ
でもこの橅の古木は
奇跡を起こした
或る嵐の晩に
漁船が島の近くで
波にさらわれ
転覆した
真っ暗な闇の中
漁船員3名は
方角がわからず
漂流物につかまって
難儀していた
その時
島のてっぺんに
有る
橅の木全体が
黄金色に 染まり
まるで灯台のように
乗組員を照らしたんだと
お蔭で
島がすぐそばにあることが
わかり島の切り立った崖の下の
小さな砂浜に
たどり着けて
九死に一生を得た
というの話が
今では伝説となっている
だから地図上は橅の島
でも人は
神の島と呼ぶ
もちろん神とは
橅の古木のことだ・・・
ちなみに日本海には
橅の島はない
作者の頭の中の
日本海に
その橅の木は
立派に立った居る
現在はブナは本州の日本海側
関東の丹沢山地などに
ごく一部しか見られない
過っては東北の北の産地は
ブナノ壮大な林があったはずなのだが・・・
杉の林に取って代わられた…植林という 経済の名のもとに・・・
すべては人の勝手・・・では済まないように 思えるのだけれど
いつかは 人間自身に・・・淘汰の波が くるのではないかと
筆者は思う