ある夏の日
ボクは
親友の幼馴染
和子ちゃんにも
黙って
幻の大滝をながめに
ひとりで 家を出ました。
小さなリュックサックには
自分で握ったおにぎりが2個と
麦茶の入った水筒とナイフだけ・・・が入ってました。
ふるさとの 赤川という川の 最上流に
その大滝は あるらしい・・・
それだけの情報で・・・出かけたのです。
見たい見たい・・・一心で出かけたのです。
家を出て小学校の左わきを通り過ぎ
大鳥城址の山腹を右巻きに 山道は
続いていました。
遥か上流には 吾妻山系の山並みが
青く霞んでいます。
どれほど歩いたのか 朝家を出て陽は真上にあります。
多分お昼は周っているような気がして ボクは少し不安になって
来ました。
その時はるか下の谷がちらっと見えました・・・そして深い藍色の
川の流れが見えました。
赤川の淵です。
淵をさかのぼると 一時間ほどで 大滝が現れると言う話は
近所のお爺さんに 聴きました。
お爺さんも小さいころ 一度しか行ったことがない・・・と 言ってました。
川は蛇行して山蔭になったり こちら側になったりしてまだ続いていました。
少しのぼるにつれ 川が近づいてきて・・・心なしかいわばも少なくなり
川底が 見えるくらいの深さに 変わってきました。
水は澄み切っていて 無数の魚が泳いでいるのが 見えます。
ボクは川に降りていく道を見つけ、降りて行きました。
川岸は広い丸石と砂利の川原があり、川幅も今まで見てきた
川幅より狭くなっていました。
そろそろかなぁー…と言いながら曲がっている川原を登っていくと
山蔭からいきなりドお―んという 凄い音がしてきました?
ビリビリと空気が 震えています。
もう一度山裾を川に沿って回り込むと、川原の先は 岩の絶壁
そして 大きな滝壺の上に・・・・そうです 幻の大滝です♪
ボクは一瞬 固まりました。
ごうごうと 物凄い音としぶきをあげて 高さ50メートル幅15メートルくらいは
有りそうな滝が目の前にで―んと現れたのです。
周りの木々も揺れています…風もないのに
空気が揺れています
霧状の水がボクを襲ってきます・・・思わずボクは へたり込みました。
こんな迫力ある滝を 初めて見たのです・・・それも真近で・・・
それは 圧倒的なパワーを7歳の少年に 見せつけるのでした。
龍は 本当にいるかもしれない・・・ボクはその時 何の脈絡もなく
そんなことを 考えていました。
気がつくと 陽が傾いています・・・ボクはあわてて帰途につきました。
得がたい 体験をした…興奮を抑えながら・・・家に帰ってから
初めて…お昼も麦茶も 口に入れていなかったことを・・・思い出しました。
幼い遠い日の 記憶です。 この経験は フィクションではありません、確かに体験した 思い出ですが 今となっては・・・あれは 幻だったのでは・・・と近頃おもうこともあります・・・(笑)