年末年始には家内が、もはや恒例行事となりつつある、感染症を発症してしまい、要介護の彼女の看病に追われてろくな正月にはならなかった。が、まぁ、それは仕方がない。どうせ正月の習慣だ、料理だは、すっかり前に放棄してしまった僕なのだ。年賀状は、生命保険会社からの2枚だけ。書かないんだから来るわけがない。宝くじだって、券を買わないといくら待っても当たらないのだ。
しかし、身体と心が、「闇」を求めて騒ぎ始めた。「映画が観たい・・・」しかしこの時期、いつものイオンシネマ座間はお子ちゃま向け漫画やアニメ、マーベル関係等に独占されて、観たい映画がない。と思ったら、ふと「私にふさわしいホテル」という題名に目が行った。堤幸彦監督だ。主役はのん?ああ、能年玲奈か。久しく見取らんなぁ。しかも8:20からとはベストである。早速予約してプレミアシートを確保した。
さて映画の話。
新人賞を受賞した新人作家の加代子は、華々しい未来を約束されたも同然であったが、なんと文壇の大御所、東十条宗典(滝藤賢一)の散々な酷評のせいで、単行本も出せずにいる。しかし彼女は、「書けないのでは無く、書かないのである」と筆は進まず、先輩で編集者の遠藤道雄(田中圭)を困らせている。しかし彼女は、数々の有名作家がそこに缶詰して作品を書いたと有名な「山の上ホテル」に宿泊し、大作家気分で原稿用紙に向かうのが、年に一度の楽しみであった。その日もチェックインを済ませた加代子の部屋に、先輩で、編集者の遠藤が立ち寄る。そして、あの憎っくき大御所、東十条宗典が、上階のスイートに宿泊していると聞かされる。加代子は、文芸誌の締め切りを落とさせて、作家の評判を貶めてやろうと、あの手この手を使って策略を練る。まんまと原稿を落とすことに成功した加代子であったが、恨みを抱いた東十条が、加代子の文壇復帰の前に立ち塞がる。こうして二人の確執は、周囲を巻き込み、激しいトラブルの渦の中へとみんなを連れ込む。
のんは、こういうコメディアンヌと言うか、ポワ〜〜ンとした女性を演じる為に俳優になったんではないかと思うくらいに良い。「じぇじぇじぇ!」とかいいそうで言わないが、あのドラマ以来彼女を見たのは久しぶりだ。大人になったが相変わらずのぽわ〜んとした空気感は楽しませてもらった。滝藤賢一はもう、さすがの芝居で、笑わせどころと、締めどころの演じ分けはさすがの一言。田中圭も、こういう役は得意中の得意。田中みな実、光石研などががっつり脇を固めて、肩の力を抜いて観られるホンワカした新春向けの映画でありました。
楽しいひととき。
なんだが原作が読んでみたくなり、柚木麻子の文庫本を紀伊國屋で購入。