
素敵な映画を見た。
ロバート・デニーロ扮するベンは、60才を過ぎて仕事を引退、悠々自適の生活を送ろうとしていた矢先、最愛の妻を亡くす。気を紛らわせようと、ヨガやダンス等を習ってみるが、どうもパッとしない。そんな時、新聞の求人欄に、年齢不問の仕事をみつける。
その仕事とは、急成長したネット通販の会社であった。シニアプログラムとして、引退後の人材を採用して、キャリアや経験を活かすという、新しい挑戦的な人事案であった。そこの社長が若き女性のジュールであった。
ジュールの会社に採用された彼の仕事は、なんと社長ジュールのアシスタントだった。実際、秘書というかアシスタントは一人いたのだが、仕事が多忙で、ベンにも手伝うように人事から指示を受けたが、肝心のジュールはベンを年寄り扱いで、彼に仕事を任せようとしない。
そんな時、ジュールの運転手が飲酒をしているのを目撃したベンは、運転手を諌めてその日は早退させ、自分が運転手になると名乗り出る。元営業マンのベンは都会の道を知り尽くしていた。もっとも効率的で渋滞しないルートを選んで、目的地までジュールを運んでいく。車中で交わした会話で、ベンはただの引退老人ではないと気づいたジュールは、彼を常に運転手として使うようになった。朝のお迎えも彼の仕事だ。旦那や子供とも仲良くなったベンは、その経験を活かして、ジュールにアドバイスをするようになる。控えめに、しかし適切に。ジュールの会社に一大事が発生するが、その出張にジュールはベンを同行させる。ピンチを切り抜けるために。
自分自身も引退の時が近く、自分の扱われ方、身の振り方、身の置き場所に苦しんでいる。
だがこの映画を観て、少し救われた気分になった。自分を必要としている会社に勤めるのではなく、自分が必要であることを、相手に伝えるのだ。周囲と諍いを起こさず、丁寧に、控えめに。それがどうやら、生きる方法、知恵のようだ。