徳川泰平の世、渋川春海と名乗る碁打ちがいた。泰平の世には囲碁が流行る。信長も、秀吉も、家康も囲碁を好んだという。碁打ちとは、将軍の前で碁を打ち、それを解説する仕事。多忙な将軍の前で真剣勝負は行わない。過去に記録した無数の定石、棋譜の中から、予め打合せを行い、棋譜を再現するに過ぎなかった。春海も、本因坊道策もこれを不満に思っていた。ある上覧碁の日、道策に煽られた春海は、遂に棋譜を離れて、必殺の奇手、天元(碁盤の中央)に黒を打ち込んだ。ざわめき非難する老中を抑え、将軍は一言「面白い」と身を乗り出した。さて、真剣勝負はこれからと言う時、突然周囲が暗くなる。日蝕が起こったのだ。これにて、上覧碁は中止となった。
春海は、安井算哲の名前で、算額の研究家でもあった。会津藩邸で同僚から、金王八幡の神社に、難問が奉じられたと聞く。明日は登城の日、決して遅刻は許されぬ。が、翌早朝、籠に飛び乗り金王八幡を目指す算哲の姿があった。そして、神社に奉納された絵馬には算額の問題が記されている。そのような絵馬が、無数に奉納されていた。いてもたってもいられず、その場で算盤を取りだし、問題に取り組む算哲。その目は、子供のような光を湛えていた。登城時刻の鐘がなり、慌てて籠に戻る算哲。問題は可能な限り書き写した。籠に乗り間もなく、算哲は帳面を忘れた事に気付き絵馬の所へ戻る。そこで算哲の目に飛び込んできたのは、さっきまで自分が取り組んでいた絵馬の問題全てに解答が書かれていた。しかも、思考の道筋もなく、ただ答えだけが!一瞥即解!解答の横には、関孝和と署名があった。神社の庭を掃除する娘に「この男を見たか
」と問うと、若い侍であったとのこと。更に娘は「磯村算額塾にこられては?兄の塾です」
会津藩邸で北極出地への参加を命じられた算哲は、一年もの測量の旅に出る。北極出地とは、日本各地を巡り北極星を観測し、地理を測量する仕事だ。雨の日も、嵐の日も、雪も日照りもひたすら歩いて測量する。算哲が学んだことは、星の運航には法則性があり、それは測量と数理で明からに出来ると言うこと。更に、現在の暦に1~2日のズレが生じていると言うこと。暦は重要だ。国中の神事や行事、納税の期限や農耕のタイミング。多くの重要な事が、暦に頼っている。その暦が狂い、蝕も予言できない。この事実を水戸光國に訴えた算哲。天下の副将軍から直々に改暦の棟梁を命じられた。
しかし、暦は武士ではなく、天皇が天から啓示を受けて定めるものである。京都の公卿から、激しい抵抗が巻き起こる。天下を二分する暦の改暦。果たして算哲は、この大事業を成し遂げることができるのか!
原作読んでたので、映画はどうしても色々な部分が省かれてしまうのは仕方ない。映画では、暦の改暦に焦点をあてていて、それはそれで楽しめる。岡田准一の演技も気負いがなく、算哲の魅力を出していたし、僕のイメージとは重なっていた。なんといっても磯村塾の娘、えんを演じた宮崎あおい!この可愛らしさは、もう、神だな!演技?眼中にない。あの、真顔から笑顔に変わるときの可愛らしさ!一瞬、目の前が、真っ暗になって、気を失いそうになったよ!
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