【読書10】東京島 (桐野夏生) | なんのこっちゃホイ!

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世の中の、これでいいのか、こんなことでいいのかを描くブログ。そんなにしょっちゅう怒っていられないので、ほどほどに色々な話題も混ぜていきましょう。

$これでいいのか!?こんなことでいいのか!?

清子は、早期退職金割り増しをもらい早々に引退した夫と二人でクルーザーに乗り、世界一周の旅に出たのだが、途中で嵐にあい難破。必死でたどり着いた無人島で二人で暮らし始める。そんなある時、与那国島の馬の飼育場から小船に乗って逃げてきた、バイト青年の一団を20数名を救助した。彼らを加えての無人島生活が始まった。彼らはこの島を、東京島と名づけて、島のあちらこちらに名前をつけて、暮らし始めた。「ジュク」に「ブクロ」,「トーカイムラ」などという具合だ。そして島の集会所が「コーキョ」と名付けられた。

更に、中国人の一団まで難破して辿り着き、島の住人は30名を超えた。
30数名の難破者の中に女性は清子一人である。後からたどり着いたものは、全て若者で、暴走族あがりから、ヤンキーまで色々な男がいた。この状況だと、何か違ったものを想像してしまうだろ?清子に対する性的な暴行であり、全員の手慰みとして清子は転落していくといったような、ちょっとポルノな内容を期待してしまうだろ?僕も期待して本を手に取った。

が!この本は桐野夏生である。そんな柔なポルノになるはずがない。
清子は「女性」を使い、その島の女神、絶対的な支配者になろうとする物語である。
夫は、2年に一度、クジで決められる。清子の側に候補者を選ぶ権利も存在しており、あれとあれは嫌だと言える。

結局この本の底流を流れているものは、「老い」というものだろう。絶対的な女神としての地位を得ることはできても、若い青年達が自分を「女性器」と見るのではなく、「女性」とみるように変化することで、若い欲望のはけ口とは成り得ない場合もある。

また日本人の集団と、中国人の集団の行動、考え方、いき方の違いも描かれていて、興味深い。一つの文化圏を作ろうとし、その結果を中国人の持つ食べ物や器具と売買あるいは交換しようとする日本人と、あらゆるものを創意工夫して便利な道具を作り、これを使って獲物を取る中国人との対比。
さて、今の日本人って、そうなんだろうか?確かにリッチな生活になれてしまっているから、使い捨てや買物でまかなっているな。昔確かに、おじいさんや、お父さんが、色々と手作りしてくれた。竹とんぼもそう、竹馬もそう。器用に針金を使って色々作ってくれた。今は、子供がほしいと言えば、ショップで買うか、ひどい時には商品も見ずに、ネットで買ってしまっているありさまだ。

最後は、う~んではあるが、そういう落着しかないかもしれないね?