昔話をまたひとつ


ぼくの会社に以前に出入りしていて

顔見知りだった

女性から突然

 「離婚した」

というメールが届いた


一体何があったのか

まったく意味不明だったが

とりあえず話を聞いてみよう

と会うことになった


というか

そもそも結婚してた事さえ

あまり会話してなかったせいで

初耳だった

それがなんで突然、離婚なのか


それは彼女の浮気だった


・・・


何でも買い与えてくれる

優しい夫と

結婚していた

彼女が乗る車も自由に買ってくれた


けど欲しかったのは

物じゃなくて

体の触れ合いだった


夫は

あまり肌に触れてくれない

だからずっと

欲求不満だった


そんなとき

若い彼と浮気した


若い彼の「写真入り名刺」を

見せてもらった


若い彼も

夫に引けを取らない

「老若男女の誰もが知る」

超有名企業の

キャリア組


若い彼と浮気をしたら

もっと体の触れ合いが欲しくなり

彼とホテルに泊まりっぱなしの生活

自分の家に帰らなくなった


そのうち若い彼から

「そんなに俺が好きなら離婚しろ」

と言われ


本当に離婚した


若い彼と一緒に住むため

マンションも借りた


すると若い彼は

こつぜんと居なくなった


残されたのは彼女だけ

離婚して

マンションに今ひとり


まさにそこへ

僕が話を聞きに

訪れている

という状態


・・・


話を聞いた僕は

なんだか

すごく

やるせ無くなった


「今なら、下の駐車場にベンツもあるよ。

 でも、もうすぐ離婚の慰謝料の支払いで

 無くなっちゃうけどね」


と彼女は言った。

泣いていた。


僕は

(・・・そりゃそうだ)と

無言で悲しい顔をするしか

出来なかった


顔写真入りの若い彼の名刺を

見せてもらったとき


僕が言った

「かっこいい男だね。

 浮気しちゃった

 気持ちもわかるよ」

という言葉に


彼女の気持ちも

落ち着いてきた

ようだった


浮気を肯定したかった

訳では無いけど

散々な彼女を思うと

そう言うしか

思い浮かばなかった


・・・


さあ、では

帰ろうかと思うと

 「・・・ねぇ。」

彼女に呼び止められた。


うーん、そういうことかぁ


 据え膳食わぬは男の恥


と言いますからね・・・


あまり

そんな気になれなかったけど

彼氏と旦那を

同時に失ってしまった

寂しそうな目を

こっちに向けられたら

向き合ってあげるしか

無いような気がしてきた

(優柔不断)


・・・


ところが

ぜんぜん

使い物にならないんだな

これが


致してみたけど

ダメだった


僕はやっぱり

好きになった人じゃないと

ダメみたいだ


風俗に興味が無く

玄人童貞なぼく


(彼女が風俗、

 という意味では無く

 恋愛感情を抜きで

 致せるか、

 という問題)


それがハッキリと

証明された日だった