これは大昔の話。


ぼくが

付き合っていた彼女に

逃げられた


という情報を聞き付けた

後輩の女の子が

ウチにやってきた


その子も

「彼氏

 どうにもあやふやな

 付き合い方しか

 してくれないし

 たぶんあいつ

 浮気してるんだよねー」

という

愚痴から会話が始まった


過去の家庭内の問題

浮気な彼氏の問題

仕事の不安


色々

話してくれた


「うん、うん。」


僕は聞き役に徹し

彼女の言葉を

否定しなかった


いろんな話を聞いた


共感する気持ちを

もって接した


そうこうしている

うち

その子が

泣き出した


辛くて誰にも

言えない

わだかまりが

たくさん

あったのだろう


ぼくも

逃げられてしまった

彼女に

僕なりの全身全霊で

頑張ったんだけど

ダメだった


他にいい男が

出来たようだ

凄まじい喪失感


だから

その子の言葉が

どこまで真実を

表現出来ているかは

問わず

つらさに共感できた

うなづいてあげた

ひたすら


ぼくは、会社の先輩

その子は、違う部署の後輩


お互い

顔は知っているけど

他愛のない挨拶だけ


それだけの

関係だった


けど今

僕のリビングで

その彼女が泣いている


・・・


「ひよわくんが

 彼氏だったら

 よかったのにな」


その子は

ふいに

そう言うと

ぼくに

もたれかかってきた


ぼくはそのまま

その子に

襲われた


男が襲われた

って変だけど


そうしたい

と思うほど

切羽詰まっている

その子の気持ちを

考えたら

拒否は出来なかった


「えへへー

 襲っちゃった」


はにかみながら

笑っている


薄明かりに

うっすらみえる

彼女が

ぼくの上にいる


・・・


それから

その子とは

あまり連絡は

取らなくなった


他愛の無い挨拶だけ

数回交わした


新しい彼氏も

出来たようだった


幸せに

してるのかな


そう思って

深く追求しなかった