娘からはその後、連絡はありませんでした。

バプテスマから半月ほどたったある日の朝、母親である私から二女にLINEを送ってみることにしました。

 

9月になったらおばあちゃんに会いに行くという話は、どうなったの?

二女を信じていること。孫として、パパとママの娘として、おばあちゃんに会うべきだと思っていること。おばあちゃんはいつまで元気かわからないのだから、いまを逃したら会えなくなるかもしれないこと。誰かに相談するのではなく、自分の意思を聞かせてほしいといった内容です。

 

すると、午後3時ころになって、二女から返信がありました。

「おばあちゃんに会いにいく。

すでにチケットを取ってある」

というのです。

 

いつのチケットなの? 何のチケットなの?

そう問いかけたのですが、二女から返信はありませんでした。

 

夜の10時をすぎた頃、夫あてに二女からLINEが入りました。

「飛行機で行く。2泊3日の予定。

1日目におばあちゃんのお見舞い。

その日と翌日の宿泊は、友人の家」

とのことでした。

(二女がこれまで住んだことのない土地です。どんな友人がいるというのでしょう?)

 

夫は、

なぜ、おばあちゃんの家で泊まらないのか?

施設の都合もあるので、その日かならず会えるとはかぎらない。

そして、おばあちゃんの家は、空港から距離があるので、飛行機よりは新幹線と特急列車を乗り継いだ方がはるかに早く行ける。

ということを、説明しました。

 

すると、

「お見舞いをするために、時間を取り分けています。

この日程でなければ、今回のお見舞いはできません。

実家には泊まりません。

おばあちゃんには会いたいけど、お父さんには会いたくない。これが本心です」

という返信が届きました。

 

びっくりするような物言いですが、一読して、おかしな文面だと思いました。

 

「時間を取り分ける」というのは、二女が普段つかう言い回しではありません。誰かから借りてきた表現だと思います。

「お父さん」がまた飛び出してきました。

「お父さんには会いたくない」、とても二女の本心とは思えません。

「この日程でなければお見舞いはできません」、まるで最後通牒のような言い方です。

 

おばあちゃんに会いたいという思いよりも、おばあちゃんに会うという目的さえ果たせばいいとでも思っているかのような印象すら受けてしまいます。時間的にはマイナスなのに、あえて飛行機を使ってスケジュールをこなそうとする。まるで猛烈ビジネスマンのようです。飛行機よりJRで行く方が早いことは、二女はこれまでの経験で知っているはずなのに……。

 

これは、二女の文章ではない。

もしかしたら誰かに書かされている。

――疑いが強まりました。

 

 

(続く)