二女がカミングアウトして、wとの「対決」が起きる前、二女と話をしたことがあります。

 

統一教会やオウム真理教のことは知ってる?と二女に尋ねました。「知っているし、ひどいと思う」と答えました。

「エホバの証人」はそれらと同じなんだと説明したけれど、二女は何も答えなかった。

 

「カルト宗教だから、近寄らない方がいい」という一言では説明にならず、納得できないのかもしれない。

実際、二女は「私の寄付する金額なんてたかが知れている。暴力をふるったり、ツボを高く売りつけたりなんかしない。何がいけないの? オウムや統一教会と一緒にしてほしくない」と言っていました。

 

私たちは、「カルト宗教」というなんだかワケのわからない危ないものだから反対しているんだとか、単に私たちの好き嫌いで反対しているというように思われては、二女だけではなく、他の人たちにも、納得のいく説明にはならないと思いました。

反対する理由をきちんと説明できるようにしなければと思い、いろいろと勉強することにしました。

 

今テレビや新聞、国会などで話題になっている「エホバの証人」内部での「児童虐待」や「性被害」、「輸血拒否カード」の問題も、とても深刻なことだと思いますが、そのまえになぜそのような問題が起きてしまうのか、もっと核になる教義について知らないと「エホバの証人」の異常性を理解できないと思います。

 

「エホバの証人」たちは、まもなく、聖書に書かれている「ハルマゲドン」が実際に起きて地球上の人類が滅ぼされてしまうと真剣に信じ込んでいます。

(ハルマゲドンとは広辞苑によると、「新約聖書ヨハネ黙示録で、神とサタンとの最終戦争の場所」。それが転じて「世界の終わり」を意味します)

彼らによればその時、生き残るのは「エホバの証人」だけだというのです。

 

人類にとっての終末の時が迫っているのだから、今は、世の中の人たちにこのせっぱつまった重大な「真理」を伝えて、「あなたも『エホバの証人』になって救われませんか?」と今日も家々のインターホンを鳴らし、駅前に立って布教活動をしているのです。

 

「エホバの証人」は、「世界の終わり」が近づいていることを伝えるのが使命ですから、布教をやめることはありません。ひとりでも多く仲間を増やし、ハルマゲドンの後に訪れるとされる楽園で楽しく「永遠の生」を分かち合おう--とマジメに考えているのです。

 

ほとんどの人は、ハルマゲドンが来る! その後の楽園で不老不死の人生を楽しく生きよう!--なんていうマンガじみた話を真に受けたりしないと思いますが、心の中に何かしらのスキマを持っている人は、この誘惑に心をとらえられてしまう。

 

さらに、「エホバの証人」たちは、自分たちの言い分に反対している人をサタンにそそのかされていると決め付けて排除します。「世の人」と関わりをもつことを徹底的に嫌うのです。それは家族に対しても同様です。そのようなことから、家族の1人が「エホバの証人」になると家庭崩壊を招くことになりがちです。

 

娘は以前なら、知り合いから桃をもらったから、梨をもらったからといっては、待ち合わせをして手渡ししていたのに急に「いらない」と言い出しました。親ですら、世の人である以上、極力、接触を避けねばならないらしいのです。

 

「証人」たちは、例えば、テレビを見てはいけないとか、世の人と深く付き合ってはいけないといってサタンとの接点を絶つことを奨励し情報管理をします。

そうやって、「エホバの証人」だけの狭いコミュニティを作り、そこから抜け出せなくしていくのです。まさに負のコミュニティですね。

 

夫は「ハルマゲドン」と「サタン」という言葉が出たら、それはただちに「カルトだ!」と断言してよいとまで言います。(事実、多くのカルト宗教にとって「ハルマゲドン」と「サタン」は2大キーワードです)

 

統一教会やオウム真理教は、多額のお金を詐取するとか、暴力だとか、その悪の部分がスッキリわかりやすいと思います。それに引きかえ、「エホバの証人」は、布教に膨大な時間を捧げることを求めます。そうしないとハルマゲドンで滅ぶと教えられるのです。「時間」というのは個人にとって人生で最も大切なもの。その「大切なもの」を奪いとっていきます。この宗教組織は、ほんわかと悪の部分をグレーにして、人の人生を台なしにしていくところが本当に悪質だと思います。

 

一人ひとりの「エホバの証人」は礼儀正しく、いい人だと言われます。不自然なほどの親切を施したりします。それはハルマゲドンで「エホバ神」の怒りに触れて自分が滅ぼされないようにという恐怖心から生まれる行動だと思います。

いつもエホバに自分が見られている、エホバに許される存在でいたい--親切心などではなくエゴに近いのではないでしょうか。(「エホバの証人」たちは、「エホバ」が神の真の名前であるとしています)

 

私たち家族は、可愛い娘を「エホバの証人」が奪っていったからと憎むあまり、ただ「かわいそう!」などと思うだけで、救出を願っているわけではありません。

私たちは、「カルト」というものの恐ろしさを二女にきちんと教えてやれなかったし、「子供の自主性」という言葉を信じすぎて親としてやるべきことを避けてしまった。あまりにも無防備に育ててしまったと後悔しています。

 

また、二女の心にどんなスキマがあったのか私たちは理解できていません。それは育て方の問題だったのか、二女の心の中に何か満足できないものがあったのか……。

親としては情けないほど二女は「愚か」だと考えたりもします。私たち親も「愚か」でした。そのことを心に留めて救出活動をしたいと思っています。

 

私たちのような災難に合う人はこれ以上出てほしくない、と心から願っています。