米国の政策がひっくり返るのは確実、日米同盟破棄を突きつけられる恐れも

 

 

11月の米大統領選の共和党候補指名争いで、ドナルド・トランプ前大統領(77)は連勝し、指名獲得に向けて怒濤の勢いを見せている。本選で民主党のジョー・バイデン大統領(81)と再対決になる公算も大きくなっているが、「もしトランプ氏が大統領に返り咲いたら」、米国の政策がオセロのようにひっくり返るのは確実だ。専門家は「日米同盟破棄を突きつけられる恐れもある」と警告する。日本の備えは万全なのか。

 

 

トランプ氏は初戦のアイオワ州党員集会に続き、第2戦のニューハンプシャー州予備選でも勝利した。2月24日にはニッキー・ヘイリー元国連大使(52)の地元であるサウスカロライナ州で予備選が開かれるが、世論調査ではトランプ氏が大きくリードしている。

 

対する民主党の現職、バイデン氏は大統領選を「民主主義と自由を懸ける投票」と位置付けるが、経済政策や中東政策が不評で人気は低迷。若年層や黒人、中南米系の支持離れも指摘されている。

 

米政治サイト「リアル・クリア・ポリティクス」の世論調査によると、支持率はトランプ氏が47・9%、バイデン氏が44・3%だった。

 

トランプ氏が大統領に復帰した場合、何をするのか。

 

貿易政策では米国の全ての輸入製品に原則10%の関税をかける考えを示している。また、トランプ政権で離脱し、バイデン政権で復帰した温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」についても再離脱する可能性がある。

 

米国政治に詳しい福井県立大学の島田洋一名誉教授は「エネルギー政策を脱炭素から転換し、石油・天然ガスにシフトする可能性もある。電気自動車(EV)に関わる優遇政策も破棄するだろう」と指摘する。

 

前回のトランプ政権では環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉から離脱した。バイデン政権が主導する日米など14カ国が参加する新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」についても「米国の産業が空洞化している」として破棄する考えを表明している。

 

北大西洋条約機構(NATO)からの脱退に言及したこともあり、外交姿勢も注目される。

 

島田氏は「ロシアのウクライナ侵略では停戦を促し、中東ではイランへの締め付けを強めるだろう。対中国は習近平国家主席の出方次第だが、台湾の抑止力強化を計る政策は実施するだろう。一方、日本がEV優遇など脱炭素政策を継続すれば、トランプ氏は『日中の技術協力』とみなす恐れもある。

 

トランプ氏周辺は米国と台湾の合同軍事演習に日本も参加させる案を検討しているとの情報もある。日本が参加を促された際、中国への忖度や、集団的自衛権の憲法解釈の問題を持ち出して拒否すれば、『日米同盟を破棄する』とも言われかねない」と語る。

 

日米関係に詳しい拓殖大学海外事情研究所の川上高司教授は「中国とは関税などで表面的に対立構造を維持するが、水面下で『台湾侵攻の延期』などで取引し、『冷たい協調』を図るのではないか。ロシアとの関係も改善し、北朝鮮と宥和的になる可能性もゼロではない。中国、北朝鮮、ロシアに囲まれる日本の安全保障の脅威は減るかもしれない」とみる。

 

トランプ前大統領に賠償命令123億円 女性への性的暴行めぐり“名誉毀損”

 

「ヘイリー氏では大統領選に勝てない」 トランプ氏、演説で対抗馬を揶揄(字幕・28日)

Reuters/Reuters「ヘイリー氏では大統領選に勝てない」 トランプ氏、演説で対抗馬を揶揄(字幕・28日)

第2戦もトランプ氏“勝利” 無党派層多い州でも“熱狂ぶり”健在…共和党候補者選び

日テレNEWS NNN/

日テレNEWS NNN第2戦もトランプ氏“勝利” 無党派層多い州でも“熱狂ぶり”健在…共和党候補者選び

米大統領選候補者選び トランプ氏が“連勝” 共和党の指名獲得に大きく前進

日テレNEWS NNN/

日テレNEWS NNN米大統領選候補者選び トランプ氏が“連勝” 共和党の指名獲得に大きく前進

 

 

岸田首相より高市氏、河野氏がトランプ氏と渡り合えるかも

日本にメリットとデメリットのどちらが大きいかは未知数だが、日本が大きく揺さぶられることは確実だ。だが、トランプ氏との「蜜月」関係を築き、制御してきた安倍晋三元首相はもういない。

 

川上氏は「日本は水面下でルート再構築に動き出している可能性はあるが、岸田文雄首相より、高市早苗経済安保相や河野太郎デジタル相ら強い信念を持った政治家の方がトランプ氏と渡り合えるかもしれない」との見方を示す。

 

島田氏は11月の米大統領選投開票までなおも波乱含みだと話す。

「民主党がミシェル・オバマ元大統領夫人を担ぎ出すという情報もある。トランプ氏、バイデン氏ともに高齢のため、民主党にサプライズがあると流れが変わるかもしれない。直近の大統領選同様に最後まで見通しがつかない」