ちょっときつい言い方に感じる人もいるかもしれませんが、先生の一言が生徒の生活のあちこちに影響を及ぼすこともあるのです。


レッスン中に度々生徒にかけられる言葉。

「ここを使う」

は指導ではありません。


『ここ』は内ももだったり、体のあらゆるところを1箇所ずつ指し示して説明されます。


1箇所がだんだんと積み重なり、何十箇所にもなってがんじがらめに力を入れてレッスンをして、身体を痛めたり、バランスの悪い筋肉がついたために外見を気にするようになったりします。


早い話がバレエは全身使うので、1箇所ずつ気にするのは踊りの妨げになるだけ。


さらに生徒が他の先生のクラスを受けに行ったところ

「アテールの片足のバランスは立てないところで立つ」

と教えられたために斜めに立って、踵を浮かせてプルプルする事態に。

まだ私のクラスに来始めて日が浅い人なので、先生の言うことを聞いてしまったんですね。


初めて見たその姿に

「いったい何事?」

とたずねたところ、上の言葉を言われたうえに手でもポジションを直されたそうです。

いや、そんな斜めになるのってわざわざオフバランスにしたときか、ジャンプの種類によっては空中でそうなるかな?ってレベルです。

バレエのバランスってそこまで無理しないですよ。

重力に従って、身体を限界以上に伸ばしたときに引き上げができます。

斜めに立って力で押さえ込むことではないです。


怖いのは、それを正しいと思って頑張る生徒もいるということ。

バレエが上達しないばかりかケガ人を出しかねません。

どうやったら上達するのか、できないことをできるようにすることを教えるのが指導であって、ただ単に難しいことキツイことをやらせるのが指導ではありません。


このような教え方をする人はダンサーとしては成功されている部類に入ると思うのですが、日本でプロのダンサーになれる人というのは、お教室の優等生がほとんど。

できる子って、説明しただけでできるんですよ、本当に。

小学生の教え子、私より踊れる子もいます。

教え子に抜かされるのは嬉しいですが、将来もし指導もすることになったときに間違ったことを教えてしまわないように知識も教えています。