ごく稀にトラムに無賃乗車の人を探す監察員がいる。
チケットを買っても1秒でも残り時間が切れていたら罰金である(約5,000円ほど)。
ひよこよさんは先日初めて、トラムを降りようとしたら
『へい、チケット見せてや』
と男性に声をかけられた。
“これが噂の…”と思いながらチケットを見せると、監察員はQRコードを機械で読み取って去っていった。
監察員は都市伝説ではないので、時間ギリギリを攻めるよりも余裕を持ったチケットを買うことをおすすめする。
乗り継ぎが上手く行き、旧市街までトラムを乗った時間は20分であった。
チケットの有効時間が残り55分も余ってしまった。
しかしこればかりは結果論なので仕方ない。
下手にケチこいて20分チケットを買って切れるより全然よいのだ。
そして前回の記事通り、旧市街にて買い物をしていた。
お目当てのものも見つかりお店を出ると、
時間を確認しようとケータイを見た。
すると待受画面に“乗車有効時間:残り10分”と出た。
10分…10分ね
このお店から寄り道せずに帰りのトラム乗り場まで歩いて10分ほどやから…
ちょうど時間切れるくらいやな
そうかそうか、ちょうどやな
…いや、
今ここで頑張って5分でトラム乗り場まで行って運良くトラムに乗れたとすればやで?
残り5分のチケットで1本目のトラムに乗れて、2本目のトラムは75分チケットやなくて20分チケットで済むやん
もし5分で行って万が一トラムが来なかったとしてもやで?
それは普通に今から歩いていった結果と同じやから別にええもんな
5分でトラム乗り場まで行けるやろか
どうしよかな…
1秒後、ひよこよさんは全力疾走していた
Google上ではお店からトラム乗り場まで徒歩13分とでた。
『間に合わせたい
75分チケットやなくて20分チケットを買いたい
今ここでがむしゃらに頑張れば節約できる』
その思いだけで石畳の旧市街をアジア人が鬼の形相で全力疾走していた。
特にその後の予定などない。
家に帰って、植木鉢からもいだバジルとチーズ挟んで焼いた硬いパンを食べるだけだ。
足が痛い。
脇腹も痛い。
ひよこよさんは普段、絶対に走らない。
最後に全力疾走で走ったのは、3年前の長男の少年野球で行われた母参加型の試合以来だ。
しかしどうしても5分後に来るかも分からないトラムに乗りたくて仕方がない。
そしてトラム乗り場へと続く階段を降りようとすると、ちょうどトラムが近づいてくるのが見えた。
あれだ
あのトラムに乗れれば
そうすれば5分で乗り継ぎの場所まで行けて、
20分チケットで家の最寄り駅まで帰れる。
最後の力を振り絞ってひよこよさんはトラムに滑り込んだ。
半端なく息を切らしながらも達成感に見舞われた。
そして乗り継ぎの2本目は見事20分チケットとなり、大満足の面持ちで無事に帰宅へと相成った。
その夜、未だアドレナリン放出中のひよこよさんは嬉々として夫に話した。
目当てのものが買えたこと、
旧市街を疾風の如く全力疾走したこと、
往復が75分と20分のチケットで済んだこと、
結果に非常に満足なことを伝えた。
そんなアドレナリン大放出嫁を見ながら夫は
『20分と75分のチケットの差っていくらやねん。
1ズロチやん。
38円やで。』
…1ズロチ38円。
そう言われて我にかえった。
3年ぶりの5分間に渡る全力疾走の末に得た1ズロチ。
12月に入り、旧市街では12時からクリスマスマーケットも毎日開催されてるのに関わらず11時半にトラムへ滑り込んで得た1ズロチ。
されど1ズロチ。
1ズロチ38円の節約に大満足した嫁は、
旧市街でのクリスマスマーケットで100ズロチの買い物を目論むのであった。
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