「あかんで、お客さん。
これ小さすぎるで。」



スポーツ用品店の店員さんが言った。



…先日初めて行った丘ゲレンデ。

丘なだけあって急斜面がなく、初心者にとても向いた作りであった。


家からゲレンデまで15分ということもあり、夫と「これを機に長男にスキーを叩き込もう」という話になった。


ひよこよさんはというと、運動全般が得意でなく、リズム感もセンスも何一つ持ち合わせていない。


しかしひとつだけ、スキーだけは幼い頃から毎年のスキー旅行で鍛えられていた。



歩き始めた頃のひよこよさんを抱えて滑る父。
母が抱いて滑っていた時は、父は代わりに8ミリビデオを回しながら滑っていた。

自分で滑られるようになってからは、父と2人でナイターも滑った。

「手首が冷たい」と言えば手袋を温めてはめ直してくれたものである。



…それにしても幼いひよこよさんを抱え8ミリを回し、さらに姉の面倒をも見ながら滑っていた両親は超人だったのだろうか。


今、あの時の両親と同じ歳になったひよこよさんは次男を抱え、長男のケアをしながらビデオを回すことなど到底出来るとは思えない。

それはすなわち、インドのバイク曲芸をこなせと言われるのと同じくらい無理な話である。


(画像はネットより引用。)




長男は6歳になった。

6歳の頃のひよこよさんはもう自分で滑っていたはずである。

長男よ、毎日雪のモスクワでスキーを始めようではないか。



ということでスポーツ用品へ。




ひよこよさんはショートスキー派である。

持ち運びも楽で扱いも簡単なので、是非とも長男もショートスキーにしたい。


夫はボード派なので、必然的に教えるひよこよさんも一式買うこととなった。


ひよこよさんが目星をつけたのがこれ。



ショートたるもの、短くてよし。


ひよこよさんが日本で使っていたものはこれより短かった気がするので、これでも少し長めに感じるくらいである。

思い切り『Jr』と書いてあるが、そもそも足が22cmなので子ども用を買うことも少なくない。



店員さんにビンディング(靴と板をくっつけるがっちゃんこの部分)の云々を聞こうと呼び止めると、


「え?これ自分(ひよこよさん)用なん?
あかんよ、これ小さすぎるわ。
ショートいうても自分の顎から頭までの高さのものにせんと。

と、こちらを持ってきた。




「いやこれはあかん。
長すぎるわ。」


「いやいやいやお客さん。
これは長すぎやないよ、ジャストサイズやで。
見てみ、ここにも書いてあるやろ。
鼻くらいまでの長さがジャストなんよ。」




「いやこれは私にとってはショートちゃう。
ただのロングや。
私は短いのが好きなんや。これにするで。」


店員さんは納得のいかぬ様子で全く動かなかった。
自分の顎をひたすら撫で続ける店員さんと無言の攻防である。


そして他のお客さんに声をかけられたタイミングで、店員さんはナチュラルに離れていった。


接客の自然消滅である。


次の店員さんに声をかけると、やはり「短すぎるで。」と言われた。


しかし、
「私にとってはこれがベストなんや。
子ども用なのは分かってる。
短すぎるのも分かってる。
けど、私は日本でこのサイズを使ってたんや。
頼む。ビンディングの調整をしてくれんか。


なぜ買う側がこんなにも商品を売ってくれと懇願せにゃならんのかと思いながら、それでも懇願した。



そして無事お会計。




ビンディングは購入後、サービスセンターにて調整。




長男とひよこよさんの、スキー板、スキー靴、ストックの2組ずつのお買い上げで…




33,500ルーブル(約52,000円)。

新年のセールで8,995ルーブル(約15,000円)の値引きがあった。



…もう後には引けない。

ひよこよスキー学校の開校である。



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レストランのテレビで流れている暖炉の映像に手をかざし、温まろうとする次男。


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