長男の通うプリスクールの担任のM先生。
子ども好きでそれはそれは面倒見がよく、小まめに連絡もくれて、いたずら好きな次男のことも可愛がってくれる…
とても素晴らしいパーフェクト先生である。
ただ、金曜日だけは違う。
迎えに行くといつもはおやつを食べている時間であろう子どもたちが、帰り支度万全の体制で廊下に座っているのだ。
そして同じく手にバッグを携え、
『私今から帰ります』
と言わんばかりのM先生が颯爽と笑顔で去っていく…。
そう、彼女は生徒より先に帰ってしまうのだ。
親が何かの都合でお迎えに来られなくなったらどうするつもりなんだろう…と毎週思う。
M先生はスクールバスを利用して通勤している。
バスの出発時間は決まっているので、急いで乗ったところですぐに出発はしない。
だが彼女は生徒の誰よりも早く教室を去り、バスに乗るのだ。
そして昨日、長男のお迎えに行くとスクールバスがなかった。
珍しくまだ学校に到着していなかったのだ。
そしてバス乗り場をうろうろしているM先生を見かけた。
「M先生、こんにちは。
長男を引取りましたよ。それではまた月曜…」
と言いかけたが、すぐにかぶせていつものマシンガントークが始まった。
「あらあらひよこよ。
おやつはちゃんと持ち返った?
忘れ物はない?
手ぶくろは持ったかしら。
今日は外で遊んだのよ。
だから手ぶくろが少し汚れてしまったのだけれど…。
もし必要でなかったら教室に置いていってもいいわ。
洗濯する?そうね。その方がまた月曜日から気持ちいいと思うわ。
それはそうとバスがまだみたいなの。
珍しいわよね。
いつもここに停まっているのに。」
そしてその5分後。
M先生はうちの車に乗っていた。
まさかのおじさんとM先生の共演である。
そして彼女は、おじさんに一言も挟み込ませることなくずーっと喋っていた。
それはもうひよこよさんの理解の範疇を超える速さのロシア語である。
そして道の途中で、
「ここでいいわ。
スクールバスよりあなたのバスのが早かったわね。ふふふ。
また月曜日に会いましょう!!」
と車の窓にがっっつりキスをして去っていった。
窓の内側から見るM先生の唇は圧巻である。
「…すげぇ喋る女だな。」
とぼそっとおじさんは言い、また車内に静寂が訪れた。
よろしくおねしゃす。
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M先生はおそらく40代か50代。
とにかく人の話を聞かないけど、すごく可愛らしいひとです。
次回はちょっと趣向を変えて『ひよこよきっちん』を載せますので合わせて
よろしくおねしゃす。**