クリスマスマーケット



それは何とも心華やぐ、少女さながらのときめきと眼差しを四十路に与えてくれる行事である。


特に何か買いたいとかそういうものではない。


ただせっかく欧州にいるのだから雰囲気を味わいたいのだ。


しかし去年のワルシャワ旧市街のクリスマスマーケットは透かしっ屁も透かしっ屁で、
下唇がずっと出ている状態で帰宅した。






『クリスマスマーケット行きたいわ。
去年みたいなおちょんちょんやなくて、
本場のちゃんと、ちゃんとのやつよ。
行かんか?』



就寝前、歯ブラシを片手に鏡越しの夫を見ながら言ってみた。



鏡越しに目が合った夫からの返事は一言、



『ストレスやわ』


と返ってきた。




ストレスなら1人で行っていい認定を受けたも同然。



そしてハンガリーに一緒に行ってくれたロンドンの友人とは別のロンドンっ子を誘い、

ひよこよさんはまた家族を置いて飛行機に乗ることとなった。







目指すはドイツ•ベルリン。



“クリスマスマーケットといえばドイツ”

というざっくり認識があったのと、

ベルリンでは見たいものがあったのでそこに決めた。




出発前日、オンラインチェックインをするとランダムで選ばれる座席が3列目だった。







嬉しい。



座席配置図を見るとエコノミー席の1番先頭である。

前の席が好きなひよこよさんは歓喜した。




しかし搭乗ゲートでチケットを見せたら止められたのである。



すると


『座席変更やからよろしゅう』


と結構な後ろの席へと変更された新しいチケットを手渡された。



不運な遺伝子を持つと座席さえも楽しみにしていると叶わないのだろうか。






さっそく下唇を出しながらボーディングブリッジを歩き、新しい座席へとがっかり着席した。





窓から外を見るとどんより雲である。


どん曇りでも雨さえ降らなければいい。




『天気くらいはどうか保ってくれやし…』



と願っていると、飛行機のそばを整備士さんが歩いているのが窓から見えた。





カラーコーンを引きずりながら近づいてくる。



帽子の隙間からくるくるとした巻き毛の金髪、

口元は防寒で覆っていて目元しか見えないが

若い青年ということは分かった。



やる気なく引きずられるカラーコーン、

その姿を無感情で何となく見ていた。




何気なく上を向いたその青年と目が合う。




すると青年は口元の防寒具をぐいっと首まで下ろし、

歯を見せて笑いながら手を振ってきた。








ごっついハンサム。







頼まぁ!!

今すぐ飛行機降ろしてくれ!!





危ない。


思わず口から出てしまうところだったし、

何ならどこかに置いて忘れ去られている女の部分さえも出てきてしまうところだった。



いやぁ危ない。


ここに来てポーランドNo.1容姿の青年に遭遇してしまうとは。




手を振るだけではない、

わざわざ防寒具を下げて笑顔を見せてきたことが非常にポイントが高い。




クリスマスマーケットに行く前に心華やぎ、

少女さながらのときめきを四十路に与えてくるとはワルシャワもなかなかのもんである。




飛びます。




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