「英国王のスピーチ」という映画を見て参りました。


カスカス日記・リターンズ


以前ならこういう映画はあまり見なかったのですが、

最近はありがたいことに、単純な感想だけじゃなく、興行や宣伝も含めた、

いろんな角度から映画について素直な言葉で話せる友人がおり、

その友人と話をすることで、視野や興味が広がりいろんな影響を受けているのですが、

今回はまさにそのおかげという感じで、ワクワクしながら見に行きました。



さて、この映画は、本年度のアカデミー賞で、

「作品賞」「監督賞」「脚本賞」「主演男優賞」の主要部門を受賞しました。


もともと主演のコリン・ファースは、ほぼすべての賞で主演男優賞をとっていたので、

アカデミー賞でも彼以外はありえない、といわれていましたが、

作品賞と監督賞は、ほんの少し前までは、「ソーシャル・ネットワーク」が、

他の映画賞で総なめにしており、当然、

アカデミー賞も「ソーシャル」がこの2つを取ると信じて疑われませんでした。


しかし、アカデミー賞の直前に開催された、

アカデミー賞に最も影響がある(投票権を持つ会員が重複している)といわれる別の賞で、

「英国王のスピーチ」がサプライズ受賞したことをきっかけに、

流れは一気に変わり、その勢いのまま受賞となったわけです。

それまでの「ソーシャル」の受賞はなんだったのか、というほどに。


SNSを利用したこともないであろう、また理解することも難しいほど会員の年齢が高齢で、

かつ保守的と言われるアカデミー会員が好むのは、

「ソーシャル」ではなく、「英国王のスピーチ」であることはわかっていたので、

どうしても、そのサプライズ受賞を素直に喜ぶことはできず、

俳優で語られる映画から、作品として様々なものを背負うことになったこの作品に、

その価値はあるのか、それは正当な評価からの結果だったのか、

そんなよこしまな思いがあり、なんだか試すような気持ちで映画を見ることになってしまいました。


前置きが長くなりました。


まず、コリン・ファース。

この役で、ほぼすべての主演男優賞を受賞しているのではないかと思われる程、

圧倒的な賞賛を得ました。その演技は神がかりとま言われる程に。

前作の「シングルマン」でも高い評価を得ましたが、

いつのまにこんな名優になったのでしょうか?

僕の印象だと、「ブリジット・ジョーンズの日記」のダメ男のままでした。

外見が決して目立つタイプではないので、年相応になり開花したのでしょうか。


彼に対しての感想は、スクリーンの中にいるのはジョージ6世だったということ。

それは似ている、ということではなく、そこに一人の人間が存在していたということ。

それはコリン・ファースではなく、コリン・ファースが演じるジョージ6世でもなく、

ジョージ6世という一人の人間がいました。それがすべてです。


そして、彼を支える二人の名優。

ジェフリー・ラッシュとヘレナ・ボナム・カーター。

どうしてここまで心が震えさせられるのか。

どうしたらこんな役者になれるのか。

やはり、スクリーンに映っていたのは、ジョージの友であり、パートナーであり、

言語療法士であり、妻であり。

それ以上の言葉は見つかりません。



スピーチというと、日本では人前にでて、こぶしを振り上げ人々の心に訴えるもの、

そんなイメージですが、この映画ではまったく違います。

仕事柄、人前にでて話すことが多々あり、何か参考になるものがあるかと期待していたのですが、

そこはちょっと違いました。

激情的で感動的なシーンはなく、盛り上がりという点は、

もしかたら人によってはアレ?って思うこともあるかと思いますが、

静かな深い感動が、ずしんと心に響きます。


結局、どちらがアカデミー賞にふさわしいのか、結論はでませんが、

それよりも、この映画に出会えてよかった、それが素直に言える感想です。


お時間がありましたら、是非ご覧下さい。


では。