お手洗いからリビングに戻ると、 意外なことに 夫さんは目を覚まし テレビを観ていた。

 

 

 

夫 「どうしたの? 長かったけど お腹痛いの?」

 

 

 

どうやら 私がお手洗いに立った気配に気づき、 目を覚ましたらしい。

 

顔の表情は 寝ぼけたものでなく、 けっこうしゃっきりして 普通そうだった。

 

 

 

…これなら 切り出しても大丈夫かな。

 

 

 

私 「うん、 大丈夫。

 

   ちょっと お話があるんだけど、 まだ眠い? 大丈夫かな?」

 

夫 「…うん、 大丈夫だけど …何?」

 

 

 

私は 夫さんを待たせて、 いったん片付けた妊娠検査薬の 外箱を取りにいった。

 

判定結果のサンプル写真が付いているので、 

 

これを見ながら説明したほうが 手っ取り早いだろう。

 

 

 

私 「これ。 いわゆる 妊娠検査薬ってやつです。」

 

夫 「…うん。」

 

私 「最近 体調がおかしいので、 今 試しに 使ってみたのね」

 

夫 「うん。」

 

私 「でね、 ここ見て。 陽性 と 陰性 って あるでしょ。

 

   陽性は 妊娠反応あり、 陰性は 妊娠反応なし って 書いてあるよね?」

 

夫 「うん。」

 

 

 

私 「……陽性反応、 だったんですけど。」

 

 

 

夫 「……ほう。」

 

 

 

私 「うん。」

 

 

 

夫 「おめでとう。」

 

 

 

私 「…うん。」

 

 

 

夫 「…………。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……それだけ?(・_・;)

 

 

 

 

 

えーと、 アナタと私の子供であるんだけど…

 

もうちょっと 興味とか ないのかな…。

 

 

 

 

 

私 「あの、 話だけでピンと来ないんだったら、 

 

   お手洗いに 今使った検査薬が置いてあるから、

 

   ちょっと 見に行ってみる?」

 

夫 「いや、 いいよ」

 

私 「なんで?」

 

夫 「見に行ったって、 事実は変わらないわけでしょ?

 

   今 話を聞いたから、 それで充分だよ」

 

私 「そうだけど……」

 

 

 

なんか そっけなくない?

 

まだ 寝ぼけてるの?

 

やっぱり 子供よりも、 海外に行きにくくなったことのが 大事なのかな?

 

 

 

私 「…じゃあ、 もう遅くなっちゃうし、 お風呂の支度しようか」

 

 

 

いろいろな返事を予想していたけど、 どのパターンよりも 反応が薄すぎる。

 

なんだか いたたまれなくなって、 その場を逃げたくなった。

 

お風呂を口実に、 私は リビングから 洗面所へと 逃げ込んだのだ。

 

お風呂場で 湯張りの準備をしていたら、 夫さんが お手洗いに入った気配がする。

 

 

 

…検査薬、 見たかな。

 

見たところで、 別に どうってことも無いのかな。

 

 

 

パジャマを用意しながら そんなことを考えていると、

 

用を済ませた夫さんが 洗面所に入ってきた。

 

本当は 「見た?」 って聞きたかったけど、

 

さっきまでの 夫さんのテンションを思うと とても 聞く気にはならない。

 

寂しい気持ちのまま 夫さんに 背中を向け タオルを出したりしていたら、

 

 

 

後ろから 温かい腕が そっと ひよ子の肩を包み込んだ。

 

 

 

 

 

夫 「……本当だ~……。

 

   ここに、 いるんだねぇ……

 

 

 

 

 

そう言いながら、 夫さんの右手は ひよ子のお腹をさすっていた。

 

 

 

……喜んで    くれてるの    かな?

 

 

 

少々戸惑いながらも

 

私 「……うん。」

 

さっきまでの不安がやわらいで、 溶けていくのを感じた。

 

よかった。

 

受け入れてもらうことができて、 本当によかった……。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとから聞いたところによると、 その日 夫さんは 会社の人と一緒に

 

久しぶりに バスケなんかやって 汗を流してきたらしい。

 

ここのところ 運動不足で 体がなまっていた上に 

 

久しぶりで 張り切って 走り回ったのが 裏目に出たらしく

 

夜には体がくたくたに疲れきってしまっていたとか。

 

人の話なんか まともに向き合って 聞いていられる状態では

 

なかったと いうことらしいのだ。

 

 

 

夫 「いつもさ、 生理が来ると メールもくれるし 体もだるそうだから

 

   こっちも すぐ分かるじゃん?

 

   なのに 今回は なかなかそういうのが無いから、

 

   『もしかして』 って 思ってたんだよ。

 

   食欲も無さそうだし、 極め付けが 『プリンいらない』 でしょ? 

 

   こりゃー 確定だなって 思ってたのもあったからさ、

 

   そんなに 驚きもしなかったんだよ。

 

   その上 バスケでくたくたのときに報告されてさー、

 

   そりゃ こっちとしたって 喜ぶ気力も無いってもんだよ」

 

 

 
そんなこと言われたって、 こっちだって妊娠するの初めてなんだから

 

不安もあるし 動揺してるに決まってるじゃないか。

 

そんな精神状態で、 私にしては 冷静に判断したと思うよ?

 

別に 飛び上がって喜べとは言わないから、

 

もうちょっと いいリアクションくれたって いいじゃないのさ。

 

 

 

今となっては いい笑い話で、 一生 ネタになりそうです。

 

笑い話になって よかったなあ。

 

すでに 妊娠9ヶ月に入りました。 来週には 臨月です。

 

逆子なのが ちょっと気になるけど、 良いお産をするべく 頑張ります♪