高校生のころ、 左足首にケガをして 一ヶ月間 ギプス+松葉杖 で生活をしていたときがあった。
足のケガというのは 手のケガよりマシとはいえ 本当に不便だ。
まず、 玄関で座らないと 靴が履けない。 家の玄関なら まだマシだ。
学校の昇降口でも 制服のスカートをはいていても ぺたりとお尻をつけないと 靴が履けない。
靴を履きたいのは 健康なほうの足だけど、 履く動作として 足を浮かせると
ケガの足 一本で 立つ状態に ならざるをえないからだ。
それで立てるなら ギプスなどしていない。
階段が不便だ。 ひよ子は 運動神経が良くないので、 松葉杖のまま 階段を上り下りするという
高等な技術は 身につけることが できなかった。
松葉杖を 二本とも 片手にまとめ、 もう片方の手で手すりをつかんで しがみつきながら、
ようやく ケンケンで 一段ずつ 進むことが出来る。 このときは 二本ある松葉杖が 非常に邪魔だ。
ひよ子の教室は 3階にあったので、 毎日最低でも 1往復。 体育があれば 2往復。
古い校舎を 建て増しして作ってあるので、 変に入り組んだ校舎は、
教室によっては 一度1階に降りて 中庭を抜け 別の校舎に入って また3階に登るという
『1往復なのに2往復?』 なんて おかしな移動を強いられるときもあった。
狭い教室に、 松葉杖を持ち込むのも また不便だ。
ひよ子の席は 廊下側の 後ろの扉に近いほうだった。
扉の枠に 立てかけておくと 突然 『バッシャーン!!』 と激しい音を立てて 松葉杖が 倒れる。
席の横に 寝かせておくと 授業中に先生がつまづく。
席の反対側の横(廊下の壁側)に 寝かせておくと、 扉にかかるため みんなの邪魔になる。
まあ、 ケガの原因は 自分にあったので 自業自得といえば それまでなんだけど。
周りの友達は そんなひよ子を痛々しく思い、
移動のときも ちゃんと付き合って ゆっくり歩いてくれた。
『まだ 良くならないの?』
『痛い? 大丈夫?』
優しい言葉だって もちろんかけてくれる。
両手が松葉杖でふさがって リュックでしか荷物が運べない ひよ子を見て、
友人1 「邪魔でしょう、 リュック運んであげるよ」
と すすんで 手を差し出してくれる。
ある日、 教室移動のときに いつものように 手を差し出す友人を見て
友人2 「じゃあ、 私はこれ」
友人3 「私はこれ」
リュックに入らない大きさの荷物を、 みんながすっかり 運んでくれることになった。
みんな、 ありがとう。 いつもめいわくかけて ゴメンネ……。
友人4 「じゃあ、私はこれを持って行ってあげる! 早く行こうよ!」
負けじと 手を伸ばした友人が あるものを ひよ子から取り上げた。
サササッと 扉の向こうまで行ってしまい、 身を半分覗かせながら こちらを待っている。
私 「あっ……。 それはいいよ、 大丈夫!大丈夫!」
友人4 「いいよ、いいよ! いつも邪魔そうだなって 思ってたんだ!」
にこにこと 微笑みながら、 友人は 運ぶ気マンマンで そこから動こうとしない。
友人1 「そうだよ、運んでもらいなよ!」
友人2 「良かったじゃん、 荷物がなくなって~」
友人3 「さ、 早く移動しよう! また 遠いもん!」
みんな、 気づいていないのか? それとも これは 嫌がらせか???(汗)
私 「あの……、 それ 持って行かれるとさ……、
わたし、 歩けないんだけど……
(・_・;)」
そう、 友人が奪い取ったのは 松葉杖。
その言葉を聞いて、 全員が 初めて ハッとしたようにこちらを見た。
みんな 「あ~!!ホントだ!!∑(゚Д゚;)」
松葉杖を持っていった友人が、 慌てて 駆け戻る。
友人4 「ごめん、ひよちゃん!!悪気は無かったんだよ!!」
友人1 「気づかなかった~、 いつも邪魔そうだなって 思ってたから…」
友人2 「そういえば そうだよね、 歩けないね、 確かに」
友人3 「うわー、 全員気づいてなかった!!おっかしいね~!!(´∀`)」
そうして、 ひよ子を含めて 全員で 笑い転げた。
高校生というのは どうしてこんなに笑うんだろうと思うくらい、 笑い転げた。
友人としては 小さな親切だったのに、 あやうく 嫌がらせになるところだった(笑)
その後、 なんとか 教室移動は 間に合いました。
みなさんへ。 松葉杖が どんなに邪魔そうに思えても、
ケガ人からは 決して 取り上げないでください(笑)