とうとう来てしまった。再引き落とし日。今日引き落としにならなかったら、強制解約なのだ。でも、お金は全くない。当然、引き落としにはならない。重い足取りで、部屋を出た。とにかく、人材派遣会社の事務所に行ってなんか仕事が無いかお願いしてみるつもりだった。
徒歩で家から一番近い会社に向かう。お金が無いから電車は使えない。途中、持参のペットボトルに入れた水で水分を補給しながら歩く。この炎天下では水分補給は欠かせなかった。
40分くらいかかって到着した事務所は、午前中にもかかわらず若い人がいっぱいだった。みんななにか仕事は無いか、と行っていた。
「***さん、お久しぶり~」
事務所のK氏が声をかけてくれた。が、先に言われてしまった。
「学生さんが休みなので、全く仕事無いんですよね~。若いこの子達も仕事が無くてウチも困ってるんですよ。」と。
事務所の本棚に無造作に置いてあるanを持って外に出た。あの調子では仕事は有りそうに無い。近くの公園でanを読む事にした。
公園のベンチはやはり同じ境遇の人だろうか。新聞の求人広告を読む人や、同じくanを読む若い人が何人かいた。そんな仲間に自分も入った。
持参のペットボトルの水が無くなった。仕方なく、公園の水飲み場から水を給水する。なんとなく惨めなこの光景。ジュースくらい飲みたいよ。
anには相変わらず若い人を対象とした仕事しかなかった。自分の年齢でも出来る仕事は登録制の人事派遣ぐらいだろうか。これもいっぱいいっぱいだけど。遠くの工場に仕事はあったが、日給月給じゃあ給料日までの生活が出来ない。八方塞がりじゃん。
暑さに耐えきれなくてうちへ帰る。帰りは体力も消耗していたので歩く速度が行きのの半分程度になる。午後3時を回った頃、やっと部屋に着いた。昼食を食べていないので腹が減ったし、喉がカラカラだった。おまけに、日焼けした。すごく黒くなった。
部屋に妻の姿は無かった。今日はパートは休みだから、実家にでも行ってるのかな?特にメモや、携帯にメールは入って無かった。
自宅の電話が鳴った。ビッっとする。知らない番号からだった。恐る恐る出る。すると、電話料金が安くなるサービスの勧誘だった。適当にあしらって電話を切る。「マイラインかよ、こっちはそれどころじゃねえ」と毒づいて、冷蔵庫の中にあった発泡酒を2本立ててづけて飲んだ。
今度は携帯電話が鳴っている。やはり知らない番号からだ。気になるので出てみる。すると、以前に同じ現場に入った事のある人からだった。他愛もない話をして切った。メモリーに名前を登録しておく。
夕方遅くに妻は買い物袋を下げて帰って来た。その姿はいつもと代わりが無い。
「明日も仕事無かったよ・・・」
言いにくいけど言わざるを得なかった。妻は
「そう・・・、仕方ないね。挙の晩ご飯はカレーでけど良いかな」
まったくいつもの通りだった。今日が家賃の再引き落としだって事は一番よく分かってるはずなのに・・・。覚悟が出来たってことか・・・。
夕食を食べながら、
「明日からしばらくは、昼間は奥の部屋にいてくれるかな。家賃の取り立てと明け渡しを請求されると思うから」
と言うと、
「今日、家賃入れて来たよ」
と妻が言った。えっ?、まさか借金?どこからそんなお金が・・・。
「今月は仕方無いよ、全然仕事無かったもんね」
なんと、言っていいか分からなかった。実際、夜逃げを考え始めてから生活のやる気が失せていたのは事実だし、全てが投げやりだったのだ。
ありがとう・・・、そう言うのが精一杯だった。がぜん食欲が出て来た。かるーく大盛りを2杯を平らげた。