日本のクルド人問題について

あ神無月、、、でも頑張る。

 在日クルド人のトラブルが続出している。去る7月には埼玉県川口市でクルド人同士の刃物を使用した傷害事件が発生し、7人が殺人未遂容疑、3人が凶器準備集合罪で逮捕された。搬送された川口市立医療センターには双方の親族や仲間約100名が集まり騒ぎとなり県警機動隊が出動している。この騒ぎによって病院側は救急搬入を5時間半に渡って停止することとなった。このことによりトルコ大使が遺憾の意を発し在留トルコ人に対し法令順守を呼びかけた。

 日本に在留するトルコ人は凡そ6000名であるが、そのうち2000名以上が埼玉県川口市および蕨市周辺に居住しているという。その中には難民認定申請中で住民票などもない「不法滞在」の状態が続いている者も多く身元がわかりにくい。そのことが警察の介入を難しくしているという側面がある。不動産の賃貸契約に関しても契約上は正規の在留許可を持つ外国人の名義でも実際の入居が別人のケースは後を絶たない。物件によっては何世帯何人が住んでいるのかも不明なことも多い。

 警察の介入が難しいことで市民は泣き寝入りを強いられることが多くなっている。市や市会議員が仲裁に入るケースもみられるが解決の目途がたつことは稀である。こういった状況を鑑み9月4日には自民党の新藤義孝元総務相(衆院埼玉2区)と地元の市議や県議らが国会内で勉強会を開いた。産経新聞の報道によると「新藤氏らは、難民認定申請中で入管施設への収容を一時的に解かれた仮放免に関し、運用上の改善を求めた。同氏によると、仮放免許可証は入管が発行するが、申請者本人の希望次第では許可証を発行されたことが自治体には通知されない。この運用上の制度が、自治体による実態把握を難しくしているとみられる。また、同氏によると、入管担当者は議員からの要望に対し、持ち帰って検討すると回答した」と報じている。仮放免者に対して出入国管理局は仮放免時に保証人も保証金も科している。3か月一回程度の出頭も義務付けている。それにも関わらず仮放免者の希望で自治体には情報が連携されないという運用は不合理であろう。

 出入国管理庁のまとめによると令和3年に出入国管理及び難民認定法違反により退去強制手続又は出国命令手続を執ったトルコ人は408名、実際に送還された者は82名、被退令仮放免者は458名となっている。強制退去となっている者の約20%しか送還されていない実態から仮放免者は強制退去命令が出ている者の数よりも多くなっている。そのような矛盾を生じさせる要因となっているのが繰り返し行われる難民申請である。

 衆院外務委員会の黄川田仁志委員長もトルコ大使を面会し懸念を伝えている。産経新聞の報道によると「観光目的で入国した一部のクルド人が難民申請をして滞在し続ける事例が発生していると指摘した。不法就労を斡旋するトルコ国内のブローカーの取り締まりや、トルコ国籍の日本滞在者に対する法令順守呼びかけなどを求めた。」トルコに対するビザの免除制度が悪用されるようであれば日本国内でトルコへの査証免除措置の見直しを求める世論が高まりかねないことを懸念してのことである。

 先日、新党の立上げを表明した百田尚樹氏はインターネット番組に出演しクルド人による難民申請を「クルド人はビザなしで日本に入国し90日の滞在期間を過ぎると91目に難民だと主張し始めて送還を回避している」と痛烈に批判している。特徴的なのは百田氏がクルド人の不法滞在問題を政府の移民政策の一部として批判していることだ。確かにトルコ国内に日本での不法就労を斡旋するブローカーが存在していることからクルド人問題を特定技能者の受け入れと混同することもあるかもしれない。特定技能の対象国はフィリピンやベトナムなど実質9か国に限定されておりトルコからの受け入れはない。クルド人難民問題は移民問題とは完全に別問題である。あくまでもビザなし渡航で入国し、その後、難民だと主張し始め国外退去を免れるというロジックである。特定技能には1号と2号があり評価認定制度があり技能水準は試験で確認される。習熟度によって2号になることが可能で、2号になると滞在期間が5年の上限がなくなる。トルコ人に対する90日の滞在が可能なビザ免除制度とは根本から違う。

 かつて上野周辺にはイラン人が溢れていた。その多くがビザ免除制度を悪用した不法滞在者であった。見かねた政府はイランに対するビザ免除制度を停止することとした。その結果、現在ではイラン人の不法滞在者や不法労働者は激減している。つまりトルコに対しても同様にビザの免除制度を停止することでクルド人問題は解消できる可能性は高い。ではなぜ政府はトルコに対するビザ免除制度を停止しないのか。ビザの発給は対象国との相互の取り決めであり、日本がトルコに対する措置は、トルコが日本に対する措置となることも考えられる。クルド人の日本への入国に際してビザなしという元栓を閉めないと不法滞在や不法就労は増えるばかりだという声も高まりつつあるのは事実。

 日本とトルコの友好関係は長い。トルコは親日国として知られ日本とは強い絆で結ばれてきた。古くは明治23年9月16日夜、 オスマン帝国最初の親善訪日使節団を乗せた軍艦 エルトゥールル号が串本町樫野埼沖で 台風による強風と高波により座礁し、沈没した。 この事故により587名の命が奪われる大惨事となったが、 事故の知らせを聞いた大島島民の懸命の救助活動により69名を救出することができた。遭難に対する大島島民の献身的な救助活動がトルコで語り継がれることとなり友好の原点となっている。1985年にイラクのフセイン大統領が「48時間後、イラン上空を飛ぶ航空機を、無差別に攻撃する」という声明を出した。イランに滞在していた外国人は慌てて出国する中、215名の日本人が出国の手立てを失い取り残された。「安全が確保されないため日本から航空機は飛ばせない」「日本政府から自衛隊を派遣する許可も降りない」と繰り返すに留まる日本政府。取り残された日本人215名は爆撃が続くイランで救助を待ち続けていた。諸外国の航空会社は自国民の搭乗を優先させるため日本人を乗せる飛行機は見つからない。絶望感に包まれた日本人たちの前に2機の航空機が到着した。日本政府の藁にも縋る請願にトルコのオザル首相が答えたものだった。いつ攻撃されるかわからない空をトルコの飛行機が救助に駆け付けた。イランに着陸したのはイラクの無差別攻撃が始まる1時間前だった。イランには500人ものトルコ人が取り残されていた。それにも関わらずトルコ政府は日本人の搭乗を優先させた。間一髪のタイミングで日本人を乗せたトルコ航空機はイラン国境を越えた。残されたトルコ人は安全を確認しつつ陸路にてイランを脱出した。トルコ国内では日本人を優先して救助したことに対して非難する声はなかったという。日本政府やマスコミが困惑する中、駐日トルコ大使が命がけでトルコが日本人を助けた理由を語った。「95年前、命がけの救助でトルコをたすけたのは日本。私たちはエルトゥールル号の借りを返しただけです」と。日本からトルコへは1999年のトルコ大地震では救助隊派遣や緊急円借款の供与などを行っている。ボスポラス海峡海底地下鉄のトンネルは日本の支援で作られた。かつて田中角栄は言った。「人から受けた恩を忘れてはならない。必ず恩返しをしろ。ただ、これみよがしに「お礼に参上した」とやってはいけない。相手が困ったとき、遠くから、慎み深く返してやるんだ」と。そして、「恨みは水に流せ、恩は石に刻め」とも。

 さて、クルド人問題は看過できない問題ではあるが、日本とトルコの友好関係にひびが入らないように扱わなければならない。あくまでも当事者は日本政府とトルコ政府である。トルコの国内事情には触れるべきではないだろう。つまり、トルコ政府によるクルド人に対する迫害はないもの信じるべきである。少なくとも現在日本難民申請している者に関して戦争被害による命の危険がある者や政治的迫害による命の危険がある者と認定できるだけの客観的な証拠はありません。クルド人難民主張者は経済困窮難民とみられるが、国際的にも日本でも難民とは認められていない偽装難民と思われる。

 そのような状況下、入国管理法を改正して難民認定申請が3回目以降となる申請者については送還を可能としたことは妥当であったと考える。政府は法改正を手段として粛々と制度の悪用に対する制限を行い改善を図るしかない。

 クルド人武装組織であるクルド労働者党(PKK)らによるトルコ国内、とりわけ南東部での紛争が存在するのは事実だ。しかし、日本で難民認定を求めているクルド人がその当事者であり迫害されているとは限らない。クルド人を難民認定して受け入れている国は実際に存在する。世界中でクルド人が13000人以上も難民として受け入れられている。アメリカやイギリスはクルド人を難民認定し受け入れている。スウェーデンやノルウェーもクルド人を難民として受け入れている。日本に来ているクルド人難民主張者はなぜ既に難民認定して受け入れている国を選ばずに日本に来たのか。日本はクルド人のみならず難民認定自体をほとんどしていない国である。やはり日本にいるクルド人は他国で難民認定受けられる可能性が低い人がほとんどなのではないか。難民認定はされずとも難民申請中は強制送還されず、仮放免中は仕事に就いて報酬も得られる、申請が却下されても繰り返し難民申請を出し続ければ大丈夫だということをブローカーから聞いた上で確信的に制度を悪用しているのだと言って良いだろう。

 このような輩に日本とトルコの関係を悪化させてはならない。日本は入管法の隙間を埋め続けるように網の目を狭めていくしかない。仮放免者の情報を自治体と共有する、仮放免中の就労の制限、偽装結婚の徹底調査、トルコ政府との犯罪情報の共有などできることから措置すべきである。少数民族の自主性や自我を否定するものではない。あくまでも日本の秩序維持の観点からの所論であることを書き添える。