①willの真相


いきなりですが質問です。どっちの方が怖いですか?


①She will kill you.

②She is going to kill you.


これ、実際にネイティブに聞いたことがある質問なんです。10人くらい聞いてみると、全員が②と答えました。「②は絶対に殺られる。①は説得すればまだどうにかなりそう。」と言います。will=100%とならった人にとっては意外な答えではないでしょうか?


どちらも教科書的に訳せば、「彼女はあなたを殺すだろう」です。が、ニュアンスは大分異なります。①をやや誇張して訳せば「彼女は君を殺すと思うな。絶対殺すさ。」です。「絶対」というからには100%なんでしょうが、それはあくまで話者にとっての100%です。極めて主観的です。とんちんかんな奴の可能性だってあります。

しかし②の場合は違います。"be going to"や”have to"、”be able to”などを私は勝手に「to助動詞」と呼んでるんですが、これらの共通点は「客観」です。これはまた不定詞の時に書きますが、不定詞にしろ前置詞にしろ、"to"は「距離感」を表します。事実を描写する上では、これは「客観」と呼んでいいと思います。

つまり②の場合をニュアンス通りに訳せば、「彼女は君を殺すことになってる。そういう予定になってる。」です。話者がどう思うとかではなく、もう今そのような予定で動き始めている、ということです(ingに含まれる「動き始めている」のニュアンスはいずれ)。


"will"の持つこの「主観的な未来」は他にも応用できます。例えばあなたが「私は(未来において)~したい」と思っていれば、以下のように言えます。


I would like to meet you. : 私はあなたに会いたい。


主観を表しつつも、toを入れることで距離感、せつなさを演出する奥深い表現です。


また、「相手に(未来において)~してほしい」と思ってるときも使えます。


Will you marry me? : 結婚してくれませんか?


日本語でも、「映画行く?」と聞けば実質的に「映画に行こう」と相手を誘っているのと同じです。つまりwill youは”please”と同じように使えるのです。命令形の最後につけることもできますから、pleaseのシノニム(同義語)だと思って構いません。


でもこれ、"be going to"なんて使ったらどうなるかわかりますか?「あなたは私と結婚する予定ですか?」って、「知らねーよバカヤロー」って言われます。


※大学時代にオーストラリアへ行ったとき、たまたま電車のコンパートメントで一緒になったカナダ人の金髪美女に、話の流れで"Will you go to sea?"と聞いたことがあります。私としては「海に行く予定はあるんですか?」と聞いたつもりだったんですが、実際は「(一緒に)海に行きませんか?」となってしまい、全力で"No!!!!"と言われたことがあります。"Are you going to go to sea?"と聞くべきだったのです。




②shallの真相


でも本当はwillのもっと前から未来を表していた助動詞があります。shallです。


I shall return. 私は戻ってくるだろう。


アメリカ人の誰もが知ってるセリフです。太平洋戦争中、破竹の勢いの日本軍にフィリピンを奪取されたマッカーサーが、大統領命令で止むを得ずオーストラリアに敵前逃亡する際、あまりの悔しさから放ったセリフです。実際、本当に彼は日本軍を破って戻ってきました(日本人としては戻ってきてほしくないんですが)。 


でもこのセリフ、当時のアメリカ国民からみてもなかなか驚きだったようで、というのも肯定文のshallというのはあまりに古風、ニュアンスとしては「私は神の命に従い必ず戻ってくる」という、宗教的なまでに強い意志を表すからです。つまり、歴史の古いshallはmustと同じく、


I shall return. = I return.


となり、未来のことなのにまるでそれを見ているかのように表現しているのです。まさに神ってます。


ですから日常会話では肯定文のshallはほぼ使いません(時々使う人もいますが、それはマッカーサーをパロってるだけです。「まじやんごとねぇ」みたいなノリです)。あまりに厳しすぎる意味だからです。



ここで何か気づいた人はいませんか?



そうです。疑問文にして、対象を自分にすれば使えますよね。すごく謙虚な意味になります。


shall we dance? 

shall I open the door?


まるで相手をお姫様みたいに扱うような謙虚な表現です。ちなみに前者のように聞かれたとき、間違ってもNo, we shall not.なんて答えてはダメです。それだと「いいえ、あなたとだけは踊らないように神様から言われています。聖書にも書いてます。」くらいのレベルです。No let's notとしましょう。


ところでそういえば、まだ必殺技を使ってませんでした。過去形のshouldです。


you should go see a doctor.医者に見てもらった方がいいよ。


shallが「それ以外の道はない」だとすれば、shouldは「他の方法も考えてみたけど、そうするのが一番いいよ」のように、相手をかなり思いやってるニュアンスです。よく「〜すべきだ」なんて訳されますが、実際はそこまで高圧的な感じではないです。少なくともhad betterなんかと比べるとずっとマイルドな表現です。


またこれを知っておけば「提案・要求・命令を表すthat節中では、shouldあるいは仮定法現在を使う」も一発でわかります。


The U.S government demanded that Japan should increase motor vehicle imports from them.

アメリカ政府は日本が米国からの自動車の輸入を増やすよう要求した。(「表現のための実践ロイヤル英文法」より)


つまり彼らは「Increase motor vehicle imports from the U.S.!!!! =アメリカからの車の輸入量増やせよ!!!」

と我々に命令しているのですが、これに「思いやりのshould」をいれることで、大分マイルドにしているのです。「〜すべき」の訳ではうまくいかないものが多いので、ぜひこの「思いやり」も知っておいてくれればと思います。

また、時たまJapan increase…のように原形動詞(仮定法現在)を使うのも、やはり「命令(未来)だから原形動詞を使う」という当たり前の発想であって、「shouldが省略されているから」という説明は正しくないことも言っておきます。こう考えると、いちいち「提案・要求・命令のときは…」などと不毛な覚え方をしなくてもよくなるはずです。

もうちょっと掘り下げておくと、VedやVs、Vingといった活用動詞(非原形動詞)は、「確定した動作」にしか使えず、命令や未来、否定、疑問といった「未確定の動作」には使えないという事情があります。だからこそ、いずれも少なからず未来の要素を含むwillやcan、must、should、mayといったほとんどの助動詞には原形動詞をつけなければならないのです。またこの「willだけでなく全ての助動詞は『未来』の要素を持つ」ということがわかれば、「助動詞を2つ重ねてはいけない」理由もわかるはずです。単に、「未来+未来」でキャラが被ってしまって気持ち悪いのです。チャゲ&チャゲみたいな感じです。


またもう1つ、「助動詞have(現在完了)には原形動詞を使わない」理由もこれでわかりますね。だって「現在完了」ってはっきり「完了」っていってますから、「確定した動作」に決まってます。つまり助動詞の中で唯一haveにだけ「未来」の要素がないのです。だからこそ彼だけは他の助動詞とセットで使ってもよいのです。


※ネイティブ的には、mustの丁寧版(過去形)は実質的にshouldなんだそうです。


You mu… you should clean the room.


のように、mustを使おうとして直前になって「思いやりのshould」に切り替えこともしばしば起こり得ると。親のいないshouldを、子のいないmustが養子として引き取ったんですね。


※ちなみに上述のアメリカとの貿易摩擦のとき、日本は「アメ車はいらねーから代わりにみかんと牛肉買ってやるよ」というあまりにも不釣り合いな条件を出し、さらにその牛肉さえも「病気(BSE)持ってるかもしれないからやっぱりいらねーわ」と切り捨ててアメリカを泣かせたことがあります。今ではアメ車の関税は2.5%と凄まじく低く設定されていますが、それであっても「そんなボロ車誰も買わねーよwww」という日本国民の姿勢です。まさに大和魂です。