阿川弘之の『雲の墓標』① | 樋浦明夫のブログ

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日々の出来事(家族や私的なことに触れるのは苦手なので、主としてグローバルな事)、歴史的な過去の出来事、浮世のことについて思ったこと、感じたことを思いつくままに写真や文で紹介したい。

 自民党の裏金問題で国民は怒り心頭に発している。政治倫理審査会での自民党幹部の答弁に

 

納得がいかないは8~9割に達している。つまり国民は政倫審に出席した議員の「知らなかっ

 

た」、「自分は関係ない」という答弁に不信感を持っているということだ。偽証罪が適用される

 

国会証人喚問で裏金問題の本質、誰がキックバックを再開し、裏金は何のために使われたのかを

 

徹底解明すべきだ。自民党の処分案では甘すぎる。のど元過ぎればまた元の木阿弥になるのは目

 

に見えている。

 

 

 阿川弘之(1920-2015)の娘さんがエッセイスト、小説家として活躍している阿川佐和子(昭

 

和28年生)で、今年(2024年)から福島の地方紙『福島民友』にも毎週日曜日に「だいたいし

 

あわせ」というエッセーを載せている。結構面白く日曜に紙面を開くのが楽しみの一つになって

 

いる。阿川佐和子は2018年に『恐父論』(文春文庫)を著して亡き父の思い出を縦横に語って

 

いる。

 

 

 それによると、父阿川弘之は「多くの時間、イライラしていて、そのマグマが定量に達する

 

と、突然火を噴く。火を噴く理由はあるようでないようで、噴かれた側は突然の噴火に意表をつ

 

かれ、恐れ入る前に、たいがい戸惑う。なぜ怒鳴られたか、にわかに理解しがたいからである」

 

とあるように気難しがりやで癇癪持ちの性格だったようだ。家庭ではワンマンで強権的、周りは

 

怒られないように極度の気遣いを強いられたことが書かれている。

 

 

 阿川弘之は1942年(昭和17年)に東大を繰り上げ卒業して海軍予備学生として海軍に入った。

 

その体験を昭和27年に『春の城』という小説にまとめて新潮社より出版し、読売文学賞を受賞

 

している。広島出身の自分自身がモデルの小畑耕二という学生とその友人らとの交友と恋愛、卒

 

業後の軍隊生活や戦争観など終戦までが描写されている。最後に原爆が投下された広島の惨状が

 

克明に描かれているのは圧巻だと思う。

 

 

 

 『春の城』に続く『雲の墓標は』昭和31年(1956)年に新潮社より刊行された。今まで取り

 

上げた戦争文学で古い順番に挙げると『生きている兵隊』(1938年)、『播州平野』(1947),

 

『俘虜記』(1948)、『遥拝隊長』(1950)、『二十四の瞳』(1952)、『人間の絛件』

 

(1955)、『黒い雨』(1965)となる。こうしてみると戦後10年以内に戦争を題材にした数々

 

の小説が書かれたことが分かる。これは単に阿川弘之のように(?)お金になるというだけでは

 

なく、戦争の事実を後世に残したいという正義感によるものであろう。