第1話 平穏からのはじまり





「ふぁ…オハヨー……」

いつもなら遅刻ギリギリまで寝ている筈が、今日に限って早く目覚めてしまった。
眠気がまだ纏わり付くせいか、どこかぼんやり感が残っている。

「珍しいね、遊がこんな早い時間に起きるなんてさ」
「しょうがないでしょ…なんか目が覚めちゃったんだから」

傍らでからかう兄を横目に、あたしは用意されていた朝食を口にした。
あたし――『瀬戸川遊』の一日は、こんな下らない会話から始まる。
テレビから聞こえるニュースや、兄が作ってくれた朝食の匂い。
たいしたことじゃないけど、あたしからすれば平穏で何事もない一時。
ちょうどニュースでは、街中で頻繁に起こっているデュエルと関連性のある事件が流れている所だった。
これは学校でも話題になってるようだが、今のあたしからすれば『たかがデュエルで』としか感じられない。

…と言うよりむしろ、興味ないのだ。


「そういや、遊宛てに荷物が届いてたぞ」

ふと何かを思い出したように、兄がリビング奥の棚から小さな小包をあたしに手渡した。

「差出人はえーっと…あ…」
「ありがと!」

早速、小包の封を開けるあたし。
その小包の差出人はある雑誌の出版社からで、たまたまアンケートのついでに応募したものだった。
中に入っていたのは、10枚のカード。
あたし達の生活の一部となっている、デュエルモンスターズのカードだった。

「よかったぁぁ~…ホントに当たるなんて思わなかったんだよね~(*´∀`*)」

思わず顔の緊張が緩んじゃう。
手にしたカード10枚は…

白いカード2枚、黒いカード2枚。
あとはモンスターカード4枚と、魔法と罠カード各1枚ずつ。

デュエルやってる人間からすれば、いろんな理由つけるだろうけど、あたしが欲しかったのはカードに描かれているイラストがとてもかっこよくてカワイイから。
そんな理由で集めたカードを見てれば、それで満足できる。
デュエルなんて、ルールがややこしいし見ていても解らない。

「あんだけカードが集まったんだから、デュエル始めてもおかしくないんじゃないのか?」

そう兄からよく言われるけど、あたしには興味ないしカードを集めたほうが楽しい。

「嫌よ、ルール難しいし見ても解らないもん。だったら好きなカードを集めたほうがまだマシ」

手に入れたばかりの10枚のカードをカードホルダーにしまい、バッグへ一気にほうり込んだ。
朝ごはんを食べ終えたあたしは、壁に飾ってある時計の時間を確認する。

「また帰り遅くなるんだろ」
「うん、友達がデュエルしてくるからね」
「なら、ついでにこれを頼みたいんだけど」

兄から一枚の紙をあたしの手元に渡される。
自分で行けばいいのに、と愚痴りつつも紙に書かれた場所の主は兄の古くからの知り合いなので、断る訳にはいかなかった。
一応、作家としての兄の『仕事先』らしいからね…。


「じゃ、行ってくるね!」
「頼んだよー(=^・д・=)ノ゛」

気合いを入れるように、あたしは家を飛び出した。




【続く】