行くか行かないか
朝九時から観光バスが並びます。
きっと草津温泉から来たのでしょう。
見事に御年配の方々ばかりでした。
数珠つなぎになってゾロゾロ登ってきます。
まるであの世へ向かう葬列のようでした。
行きは20分 帰りは10分
舗装されているとはいえ
見た目よりも結構きつい坂道です。
僕がいつも山で見かける御年配の方々とは違います。
右も左も 後ろも前も ハァハァ ハァハァ
眉間にしわを寄せながら、イヤラシイ声で喘いでいました。
そんなハアハアに囲まれながら、僕は我慢して口を閉じ
鼻呼吸だけでフンフン歩みを進めます。
「がんばって、行けるとこまで行きましょう。無理ならそこから引き返せばいいから」
互いに励まし合いながら上って行きます。
行けるとこまで行って引き返すくらいなら、最初から上らなければいいのに。
だって、それじゃあただ辛いだけじゃないですか?
さらに、上まで行った人の「きれいだったよ」って言う
自慢話を聞かされ、写真を見せられ、自分が写っていない集合写真を配られ
ああ、自分は世界中で一番情けない人間なんだと自虐し始めて、
その後のツアーなどキャンセルして、自分だけとっとと帰りたくなってしまうでしょ?
休んでもいいから、少しづつでもいいから
最後まで登りましょうよ。
人間の身体は気持ちで動くものです。
心が折れたら、身体は動きません。
ああ、途中で動かなくなっても僕は知りませんけどね。
ええ、僕は登る直前に 優雅に煙草ふかしてました。
おかげで5分も歩いたら、肺が破れそうで ハァハァどころか
ヒィヒィ言ってました。
僕の心は簡単に折れます。
途中何度か立ち止まっては、キャメラを構え
写真を撮っているフリをしながら、呼吸を整えていました。
僕を動かしていたのは、「爺や婆に負けては恥ずかしい」
っと言う羞恥心だけでした。
ナナカマドの赤 ハイマツの緑 ダケカンバの黄色
都心では見られない高地ならではの紅葉でした。
もうすっかり見頃は過ぎていたそうですがね・・・ふっ
この下に見える道路はこのまましばらく走ると
志賀高原にたどり着きます。
日本で一番標高の高い所を走る国道なのです。
本当はそこまですぐだったので
行こうか行くまいか随分迷いました。
でも道すがら気になっていた所があったので
結局引き返してしまったのです。
志賀高原は紅葉がまさに見頃だったようで・・・
なんだか今回は選択ミスが多かった気がします。


