「没後20年特別展 星野道夫の旅」 | ひつぞうとおサル妻の山旅日記

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ひつぞうです。
おサル妻との山旅を中心に日々の出来事を綴ってみます。

「特別展 星野道夫の旅」


往訪:2016年10月27日

場所:横浜高島屋

◆入場料(大人)800円/開場午後8時まで





こんばんは。ひつぞうです。
昨夕、横浜高島屋で開催中の故・星野道夫さんの作品展を観にいってきました。
会期が10日あまりしかないので平日の閉店間際に飛び込んで。

20年前。
カムチャッカ半島でのこと。
とある動物バラエティ番組の取材中にヒグマに襲われて亡くなられたのは
今でも記憶に新しいです。

ヒグマ襲来の危険性が高かったのに
あえてテント泊に拘らざるをえない事情があったのか?
星野さん自身の強い意向だったのか?
事件後さまざまな証言もあり、真実は藪の中ですが
ひとつだけはっきりしているのは、襲った個体が人間によって
餌付けされたものだったということです。

ヒグマに限らず、クマは執着性の高い動物として知られていますね。
一旦自分の所有物だと認識すると、絶対に取られまいとする。
嗜食性も高く人間の味を覚えてしまうと再度襲う危険性が高いといいます。

例えば、登山愛好家ならすぐに脳裡に浮かぶ、北海道カムエクで起きた
「福岡大ワンダーフォーゲル部ヒグマ事件」では
ヒグマに奪われたザックを取り返したことが
三人の大学生の運命を決めたと言われています。

また、大正四年の「北海道三毛別ヒグマ襲撃事件」では
最初に犠牲となった女性の遺体を棺桶から奪い返し
その後も女性だけを繰り返し襲って嗜食したことが記録されていて
吉村昭先生の『羆嵐』に詳しいです。
(これを読んで暫くは北海道の山に行くのが怖くなりました)

「怖い!怖すぎる!」サル


つまり

クマに餌を与えるな!
絶対に残飯を残すな!


ハイカーの皆さん、自分の身に返ってきます。
ほんとにほんとに気をつけましょうね。
(残ったカップラーメンの汁も駄目ですよ)

脱線しました…。



星野さんは天に召されましたが、その作品の輝きが失われることはありません。

探検部に所属した星野さんは、古書店で偶然手にしたアラスカの写真集に魅せられ
なんと、そのシシュマレフ村に「働きながら滞在させてください」と手紙を送ったそうです。
(その往復書簡も展示されています)

まさに「見る前に跳べ」を地で行く行動力に脱帽。
穏やかな童顔からは想像できません。

どんどん脱線しますね。すんません(笑)。

「ひつぞうよ、文章ばかりで辛いだよ…」サル


★   ★   ★

作品的なものをここに載せることはできません。
未発表作品を含む250点と生前の愛用品を展示。
その作品と人物を回顧する特別展です。
(あとは想像力を働かせるか、本を買うか、あと二日で通ってくださいませ)


台地を蛇行しながらゆっくりと流れるアラスカの大河。
写真は時間と切り離されたものですが
大切りの画面からその運動エネルギーが伝わってくるのが不思議です。

大平原と彼方に聳える万年雪を戴いた鋭鋒群。
その大平原を点景となったカリブーの群れが一糸乱れず走り抜ける。
彼らの去った後には草花の一本たりとも残っていないそうです。

動物たちの表情や仕種を見ていると実に人間臭い。
本来、動物とはこうした豊かな表情を見せているのかもしれない。
僕らが普段眼にするのは敵に警戒し緊張する表情なのでしょう。

腹を見せてだらしなく眠るホッキョクグマ。
縄張りを侵され怒り狂うナキウサギ。
最高のパフォーマンスに自己陶酔するザトウクジラ。

母たる存在は全て母たる慈しみの表情なのは何故なのでしょう。

当然、それこそ星野さんの腕なのです。

でも、自然の在りのままの姿を紹介されている感じで
芸術家的な押付けがましさが微塵もありません。

狙ったポイントに「獲物」が到来するかわからない中で
何時間も何日間も待機しなければならない。
根気と集中力。

偶然のワンカットに僕らは喜びがちですが
プロの作品にはありうべき構図と工法が作り上げる伽藍のような
揺るがし難さがあるように思います。

ホッキョクグマの親子のポストカードを買いました。

我が家のトイレのミニ画廊にこの一枚を貼れば
辛いことも忘れることができそうです。

極北の連鎖の頂点に君臨するポーラーベアですらも
二頭以上の仔熊を育てることは適わないのですから。

「生きる」ということの適わなさを、詩情的に苛烈に捉えた詩人の生涯でした。

~ 楽屋にて ~
「ちょっとマジメすぎたんじゃね?」サル

崩しようがないです汗。 とっても崇高なオーラがあって…あせ


(おわり)



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