【高すぎる日本のガス調達価格、対策はある】

東洋経済オンライン
[12/6 14:25]


高すぎる日本のガス調達価格、対策はある


――松山泰浩・経済産業省 資源エネルギー庁 石油・天然ガス課長に聞く

米国で急速に進んだシェールガス、シェールオイルの生産本格化による「シェール革命」。

日本でも秋田県で国内初のシェールオイル採取に成功したことにより、「シェール」への関心が高まっている。

「米国シェール革命と日本」シリーズ6回目では、日本政府の石油・天然ガス政策を担う経済産業省 資源エネルギー庁の松山泰浩・石油・天然ガス課長に、シェールガスを含めた低廉かつ安定的な天然ガス確保のために、政府としてどう取り組んでいるかについて聞いた。

LNG輸入急増で量と価格のダブルパンチ、産業空洞化も懸念

――東日本大震災後、国内の原子力発電所が順次稼働を停止したことに伴い、代替する火力発電の主力燃料となる液化天然ガス(LNG)の輸入量が急増しています。

問題なのは、日本のLNGの調達価格が米国国内価格に比べて5倍前後、液化・輸送費用を勘案しても約2倍と異常に高いことです。

こうした状況を政府としてどう考えていますか。

大震災前、全電源に占める原発の割合は3割強だった。

それが今はゼロ近く(3%弱)に落ち込んでいる。

原発の再稼働については国全体の問題であり、政治判断や世論を踏まえて、その是非が決まっていく話だが、それまでは代替のエネルギーで賄う必要がある。

震災前は火力発電が全電源の約6割を占めていたが、今は9割に増えている。

中でも比重が大きいのがLNG火力だ。

量でいえば、2010年度の7000万トンに対し、今年度は約9000万トンに増える見込みだ。

量だけではなく、価格のパンチもある。

日本が輸入するLNGの価格はほぼすべて、JCC(=Japan Crude Cocktail、日本に輸入される原油の月間の加重平均入着〈CIF〉価格)に連動した長期契約で決まっており、原油価格が1バレル当たり100ドルを超す高水準にある近年においては、歴史的に見て非常に高いガス価格になっている。

燃料輸入額の急増を主因として、日本の12年度上半期の貿易収支は過去最大の赤字(2.9兆円)を記録した。

年間では6兆円との赤字予想もある。

恒常的な黒字を上げてきた日本の貿易構造が大きく変化している。

また、電力の安定供給と電力料金の上昇に対する不安で製造業の空洞化懸念が加速しており、輸出をプッシュアップする稼ぎ手が減っていく状況。

こうした下方スパイラルが広がっていくことが、エネルギー政策のみならず、経済政策全体を考えていくうえで、われわれの非常に強い懸念としてあり、これを何とかしなければと考えている。

■ アジアプレミアム是正のための3段構えの対策

――現状を打開するために、政府としての対策は。

3段構えで対応している。

その第1が、北米の安いシェールガスを輸入することだ。

米国のシェールガス価格(指標銘柄のヘンリー・ハブ)は現状3ドル台(100万英国熱量単位ベース)。

液化、輸送コストを6ドルとしても、10ドル程度で輸入できれば、現状(15ドル台)に比べてかなり割安となる。

現在、日本企業は米国内で3つの主要LNGプロジェクトに関与している。

また、大手商社やINPEX(国際石油開発帝石)などが米国やカナダでシェールガスの上流権益を数カ所保有している。

日本政府としては、こうしたプロジェクトを通じた日本へのLNG輸出許可の承認を、米国政府などへ積極的に働きかけているところだ。

第2には、北米だけでなく、豪州やロシア、東アフリカなど世界各地から長期で安定的かつ安い価格でLNGを調達できるようにポートフォリオを組むことだ。

日本企業が世界各地で上流開発やLNG基地開発を同時に進めていき、各地で競わせることによってプロジェクトを低廉な価格で立ち上げていくことが重要と考えている。

北米のシェールガスは、そうした長期ポートフォリオの一要素との位置づけだ。

モザンビークなど東アフリカでも多大なガスの埋蔵量が確認されており、日本企業も参画し始めている。

隣国ロシアでは、日本企業も出資するサハリン2プロジェクトで、プリゴロドノエ(南部の積み出し港)にあるLNG基地から日本への出荷が始まっている。

今年9月には日露首脳立ち会いの下、資源エネルギー庁と露ガスプロム社(天然ガス生産量で世界最大の企業)との間でウラジオストクにおける新規LNG基地建設プロジェクトの覚書に署名しており、さらなる拡大を目指している。

そして第3段が、今年9月19日に日本がホスト国となって開催した「LNG産消会議」(生産者・消費者会議)での取り組みである。

この会議は、生産国と消費国の双方が将来にわたり望ましい価格のメカニズムと水準について、需給や生産の見通しに基づいてオープンに議論しようというもので、今後も年に1回のペースでやっていく方向。

日本としては、JCC連動の固定的な価格体系から脱し、よりマーケットの需給を反映したプライシングにしていく狙いがある。これまでは日本をはじめとしたアジア各国は、その安定的な購買性向も影響して、「アジアプレミアム」と呼ばれる割高な価格でLNGを調達していたとされる。

価格メカニズムを見直すことで、これをできるだけ引き下げることができないかと考えている。

■ 米国の輸出許可は政治問題、日本政府として積極支援

――米国からのLNG輸入に対して、米国政府の認可は下りるのでしょうか。

米エネルギー省の認可がなければ、輸出はできない。

そのためわれわれは米エネルギー省に対し、早期輸出承認を出してもらえるように公式な形でずっと要請を続けている。

日本は現在、エネルギー危機の中で非常に厳しい状況に置かれている。

米国にとって最大の経済パートナーである日本がしっかりした地位を保っていくためには、より低廉なエネルギー調達が不可欠であり、そうしたことを米国の関係者に訴えている。

米国側も事情は理解してくれていると思う。

ただ、米国にとってエネルギーの輸出は政治的イシューであり、エネルギー・セキュリティをどこまで緩めていいのか、どれだけ輸出すべきなのかについて、大統領選も終わってこれからしっかり議論されていくと思われる。

今のところオバマ政権のスタンスは定かではないが、4月末の日米首脳会談で野田総理が協力を求めたように、今後の政策決定プロセスにおいて、日本政府としてもさまざまなチャネルを通じて要請を行っていく方針だ。

――期待は十分ですか。

われわれは大いに期待している。

これまでも決して全面的にノーとは言われていない。

ただ、これは政治問題であり、賛成派も反対派もいる。

賛成派は日米関係を重視する人や、天然ガスの開発に従事する人たち。

一方で、環境重視の人たちの間では、ガス開発の拡大に反発が強い。

石油化学産業など米国内でガスを利用するユーザー産業も、輸出拡大で米国内のガス価格が上昇することへ懸念がある。

最終的には政権としての判断となる。

――韓国はサビンパス(ルイジアナ州)のLNGプロジェクトで米国政府から輸出認可を受けましたが、日本と違い米国とFTA(自由貿易協定)を結んでおり、韓国ガス公社(KOGAS)によるバイイングパワーも強い。

日本は後回しにされる懸念もありますが。

確かにFTA締結国との間では自由な輸出が認められており、その意味では韓国は有利な立場にある。

日本もFTAやTPP(環太平洋経済連携協定)を結ぶべきというのは、もっともな話だ。

ただ、これには時間もかかる。

現状では、非FTA国の立場でもサビンパスのような輸出承認を得るというのが目指すべき目標だ。

韓国などFTA締結国によって輸出許容分のすべてを取られてしまうかという懸念については、必ずしもそうでもないのではないか。

韓国などFTA国の需要分は限定的であるし、各国とも米国のシェールガスだけに輸入の比重をかけることもないだろう。

シェールガスには生産量や価格の安定性になお不確実性があるためだ。

ただ、世界のLNG需要の3分の1強を占める日本としては、できるだけ早期に輸出認可を受けるべく努力すべきであることに変わりはない。

韓国ガス公社のように、政府系の巨大企業が一本化して受注活動をしているメリットは確かにあるだろう。

だからわれわれ日本政府としても、今やっているように世界を飛び回って音頭取りをしていかなくてはならない。

米国で日本企業が参画している3つのLNGプロジェクトについても、政府がサポート役として働きかけを行っているところだ。

――資源権益の獲得に向けた国家予算の投入は。

もちろん強化している。

今夏の国会でJOGMEC法(独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構法)を改正し、産投会計(財政投融資特別会計投資勘定)の予算を天然ガスの上流開発やLNG基地開発に投入できるようになった。

以前からエネ特(エネルギー対策特別会計)を通じて上流探鉱へのリスクマネーの供給は行っていたが、今回の法改正によって、天然ガスの採取や液化についても資金を活用することができるようになった。

ただ、基本的には民間企業のニーズがどれだけ高まるかによる。

■ 重要なのは需給ベースの価格メカニズムと低廉な適正価格

――先日、関西電力が英国の大手石油会社BPとの間で、17年度から15年間にわたって米国のヘンリー・ハブ(天然ガスの指標銘柄)に基づいた価格でLNGを購入する契約(年間約50万トン)に基本合意しましたが、これをどう受け止めましたか。

非常に画期的な話だ。

関電としては、原油連動ではなく実勢の需給を反映した、できるだけ安い価格で調達したいとして玉を探している。

一方、サプライヤーであるメジャーも大震災後に2000万トン増加した日本のLNG需要の動向には大きな関心を持っており、その増加分をできるだけ長期にわたって先に取りたいと考えている。

BPは、トリニダード・トバゴに代表されるような安い玉を持っており、今回の契約は、新しい価格フォーミュラでより安く調達したい関電と、他社に先駆けて大量の売り先を確保したいBP双方の利害が一致したものと見ている。

今のヘンリー・ハブ価格を基準とすれば、関電は3割程度安く調達できることになる。

こうした動きは他社の間でもいくつか出てくるだろう。

私は11月下旬に「第13回ワールドLNGサミット」に出席し、オープニングスピーチを行ったが、メジャーなどのサプライヤーの日本に対する関心は非常に高いと感じた。

彼らに対しては、電力会社など日本の公益企業がかつてなく低廉なエネルギーを必要としていることを説明してきた。

――ロシアからのパイプライン直結による天然ガス輸入計画の実現性は。

今のところは難しい。

ロシア政府やガスプロムとしては、極東開発を推進したいという強い考えを持っている。

プーチン大統領の強いイニシアティブで最優先となっているのが、ウラジオストクでのLNG基地建設であり、その周辺に化学コンビナートや電力施設を造るという計画で動いている。

そのため今、日露政府間でサハリン・日本間のパイプライン敷設というアジェンダ(課題)はない。

もちろん、経済的な意味ではLNGよりパイプラインのほうが安いかもしれない。

ただ、漁業交渉や土地の収用などの問題もあるし、一概には言えない。

ともあれ、今のところの両政府のファーストオプションはウラジオストクのLNGとなっている。

こうした長期的なプロジェクトを1つひとつ積み上げていって、メジャーや産ガス国企業による寡占状態に風穴を開けていくことが日本として重要だと考えている。

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各電力会社による電気料金値上げで日本経済が沈没し廃業に追い込まれる企業が出て来ると言われている。

日本維新の会の石原慎太郎代表も、このまま原発を止め電気料金が20%アップすればアルミ業界など廃棄に追い込まれると発言している。

…が、電気料金値上げの原因となっている火力発電の燃料(LNG)をこのまま世界最高値で買い続けた場合の話しで、既に安価な燃料の買い付けや交渉、シェールガスへの以降などの動きが活発化している。

原発が無くなれば電気料金値上げで日本経済は沈没するなどは、原発推進派による脅しに過ぎない。


加えて再生可能エネルギーの普及や発送電分離・電力の自由化により今よりも電気料金が下がる。

原発が再稼働すれば、それらの努力は不要となり電力会社の独占体制は続く。

今、まさに電力革命の時なのだ。

革命には必ず犠牲(一時的な電気料金値上げ)が伴う。

それを乗り切れるかが企業を含め日本国民に求められているのだ。






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