空は青々とし陽の光は燦然と降り注ぐ。

 ベンチにすわって居る生徒は

  眠りへと誘われそうだ。

 周りは木々に囲まれ森林浴もできるらしい。

 最寄りのバス停から小高い丘を登って10分。

  ここは聖琳大学。

  この物語の3人の主人公が通う大学だ。

  赤レンガのブロック塀が両脇に見えてくる。

  向かって右手のブロック塀に、

  モスグリーンの枠に金色で聖琳大学と、

  縦長に記されている。

 左手の向こう側にルーフ付きのロータリーが

 学生の挨拶で賑わっている。

  今日のは前期の終わり。

明日からは夏やすみなのだから当然。

シャトルバスがロータリを後にして、

走り出す光景も見えてくる。

右手の下側には階段を降りると、

体育館に運動グランド・・。

青春を謳歌する学生の喚声でいっぱいだ。

校門を通り抜けると14階の棟が見えてくる。

ゼミ棟・講義棟・

サークル棟で構成されている校舎だ。

 さて、

ゼミ棟の一室では前期最後の

授業が行われている。

的山ゼミ・・講師は的山紀之。

銀縁眼鏡にツンツンのショートヘアー。

輪郭に沿って髭を生やしている。

紺のジャケットにブルージーンズ。

所謂、横浜なトラディショナルな服装。

イケイケな30代。ゼミのテーマは

「俺流恋愛心理学。」

斉藤学の大ファンなんて誰もが知る事実。

 この物語の主人公達が抱腹絶倒の御様子。

 「さりげない3原則!」

このフレーズに3人とも

机を叩いて笑いが止まらない。


的山の小道具・・警笛。

「警笛コール。はい!ピッピッピ」

 甲高い声で焚き付ける男。茶色でツンツン頭

  的山ゼミの盛り上げ役名前は須立 香。

 サングラスに手を合わせ目を瞑りながら、

 聞こえてくる台詞・・・。

 ・・てめぇ香君このやろうなんですよ。・・

 すかさず、ライターでおでこをポンポン叩く。

  的山は愛煙家だ銘柄はマルボロメンソール8mg

  「はぁ~香さぁ・・前期最終日ぐらい

     おとなしくしたらどうだよ。」

  アニメ活躍する声優ボイスが二人に届く。

  両親に買っていただいたのか?

   3万円前後のブランド製のメガネが良く似合う

  センターパートな男の子。

   織成 宗乃助一応この物語の中心人物。

   憂鬱なわりにはパッチリとした瞳。

    呆れてるわりには含み笑い。

    どこか冷めてるけど、この状況を

    楽しんでいる・・

   明るい茶髪なショートボブスタイルの女の子

   指先は派手なネイルアート。

   シャープペンを指先で転がしながら、

   囁き声で「フフッ」木澄 渉が3人を見つめる

   この物語の主人公の一人だ。

   的山がメガネが似合うニヒルなドヤ顔で、

   イキッた30代が声高に黒板に記された

    イタイ文章を述べる。

    「さりげない視線・さりげない所作

        さりげない表情!

        これがさりげない3原則だ!。」

 他のゼミ生達が笑い声を響かせる状況に於いて

 3人はビミョーなフレーズに

  乾いたため息を溢した。

  茶髪で2ブロックでワックスで、

前髪だけを立たせる。眉毛まで茶色・・。

眉尻に向かいやや斜めに上がっている。

 しかし微笑むと目尻に皺が・・。

それ相応に苦労しているのか?年齢不詳な30代

的山が「今日で前期は終わりだけどな!

            夏休みは有意義に過ごせよ!終わり。」

前期ゼミの終わりを告げた。

 一斉に席を立ち帰路へと向かうゼミ生達。

 3人の耳に聞こえてくる会話は御約束。

  「ねぇ?バイト決めた?」

    「コンビニかな?」

  「俺はガソリンスタンド」

言うまでも無いが大学生の夏休みは

バイトシーズンだ。3人が向かうのは、

バスロータリー。聖琳大学は比較的

街並みから遠い・・学生専用の駐車場は無い

 故に殆どシャトルバスを利用し通学する。

  人混みが嫌いな渉が

「学生が減るまで休もう!」と

  ベンチを指し示す。一人走りながら、

  何故か?真ん中に座ってしまう渉ちゃん。

  宗乃助と香が揃って「はぁ」とため息。

   軽く駆け足で香が渉の左隣。

   宗乃助が渉の右隣。

超マイペースな渉の一言が二人を更に

やるせなくさせる。

 「二人ともバイト決めた?」


    本当はバスロータリー乗り場近くの自販機で

     炭酸フルーツ飲料・・今はファンタなら?

     何でもいいのだが・・。宗乃助は、

     昨晩両親との会話を思い出す。

   

      「俺は警備員のバイトかな~。」


     制汗スプレーを首もとに

     シュッ・・シュッシュ。手元をシャツの中へ

     またシュッ・・シュッシュ。

     ネイビーなハンカチを

     ジーンズのポケットから取り出し汗を拭く。

     香は学内のバイトの掲示板を見て

      直ぐに決めた仕事があった。


    「俺はテニススクールの受付。」


         渉はイメージしている。

        学内の店舗でレジ打ちする渉の姿。

      ハキハキな口調。ニコニコな微笑み。

      お客様の視線はメロメロ。

      吹奏楽部で頑張る一方、習い事で、

      小学生から高卒まで珠算を学んでいた。

     親の言い分だ

   「検定はどうでもいい。勘定を楽しんで。」

    レジのバイトぐらいはきっと大丈夫だ。

     お客様の人気は集まる!

     仕事できて評価は高まる!

     俯いてクスクス微笑む渉ちゃんだ。


     「私は学内でレジ打ちのバイトなんだ。」


     俯いたかとおもえば隣に座ってる織成に

     視線を向ける。

    織成がこの聖琳大学を志望した理由が、

    「徒歩10分で通えるから。」

   聞いた渉と香は事務的に話す織成に、

   ・・こいつは凄い奴かも?!。・・

    「ハァ」とため息を溢した。

    色白で細面ハリーポッター少年が、

    ジャニ系タレントになったら織成!

    メガネが似合うクーデレ青年。

    須立香の印象だ。

     真夏の陽光が素肌に容赦なく刺さる。

    ゼリー状のサプリメント健康食品を、

    渉がゴクゴク飲んでいる。

    中学生の頃は陸上部を途中で辞めた。

   高校生は帰宅部で通した織成。

   幼なじみの渉にしてみれば?

   そんな織成が警備員のバイト?

    アヒル唇で思案する渉ちゃん。


      「なんで織成は警備員のバイト?

        香のテニススクールの受付は分かるけど

      なんか?らしくないって。」


         「家庭教師なんて駄目だ。」

          昨晩、宗乃助に届いた無慈悲な言葉。

        存在を全否定される言葉だ。

       蟀谷に皺を寄せて銀縁眼鏡を掛けなおし、

      新聞を黙読している父親からの言葉だ。 

    FT建設・・建設・建築・土木・

                        コンサルタントまで手広く

  営業を掛け仕事を増やしてきた。

  中堅ながら総合ゼネコン。勤務して25年

 織成 宗太郎は建設コンサルタントのベテランだ

 お客様に同業他社より低コストで、

 より良い仕事ができます!営業部門の花形だ。

  新聞に目を通しながらコーヒを飲む。

  右手の傍に置かれたブラックコーヒー。

  コーヒ皿にコーヒシュガーにフレッシュ。

  母の聡美が慣れた手付きでコーヒシュガーと

 フレッシュをマドラーで混ぜる。

  一切音も立てる事もなく。何故なら?

 宗太郎は余計な音が嫌いなのだ。

 仕事柄か?余計な音は何より不安になるらしい

 予想外の音は誰かが不幸になる瞬間だからと。

 新聞紙を折り畳み聡美に渡して宗太郎が、

 ボソボソと語りだした。

 「宗乃助。警備員のバイトをしなさい。」

  声は力強くまるで「白竜」さん。

   齢50半ば庶民的な木村拓哉さん。

 織成 宗太郎だ。父親の言葉には逆らえない。

 「はい。お父さん分かりました。」



   「お父さんの勧めでさ。なんかさ~

      なよなよした僕に

     男らしくなってほしいんだよ多分。」


     足音を擬音語で表すと「スタスタ」

     長机の四つ角を曲がる時の角度は90度。

    個性を表す擬音語「キチッ」とか「カチッ」

    ちびまる子ちゃんのまるお君が

    スーパイケメンになった男の子。

    香が宗乃助に持つ印象だ。


    「宗乃助が警備員?ビミョーじゃないか?」


    汗まみれになって赤旗と白旗を懸命に振る。

    日焼けした肌な割りには爽やかな男性。

    学校の前の道路・・恐らく一車線規制の

    交互通行?工事名は分からないけど。

    徒歩で10分帰り道で最近見かける警備員。

    無言で立ち尽くしたまま?

     何を考えてるか分からない?

    車を止めて?良いタイミング車を通す。

    その光景に自分が居るなんて・・。

     食事が終わり部屋へ向かう宗乃助に、

     厳格な父からの一言。

     「警備員の仕事を通じて、有言実行。

        その言葉の重みを知りなさい。」


   「有言実行て言葉を学ぶんだよ。」


     口唇を結んでも瞳がぱっちりしてるから、

     頼りなさだけをしっかり渉に伝える。

     言葉を行動にする・・「有言実行」

      大人びた物憂げな瞳がミステリアス。

     母性本能をじわりじわり刺激してくる。

     「織成は接客業に向いてる。」

    歳上に好かれそうな人柄なのだ。


    「織成は接客業とか向いてない?

      まぁ、でも有言実行ってのをさ

       警備員で学べるのなら良いんだけどね。」


        今?香の脳内にリフレインする曲は、

        パッヘルベルの「カノン」だ。

       目に浮かぶ光景は・・・・。

       「私、テニスなんて初めてですわ~。」

     「ラケットを振ったことはありますの。」

     そんな会話が飛び交うなかで、

      茶髪縦巻きロールなヘアスタイルに、

      瞳がパチクリ! 

      乳白色の極みなスベスベ肌  お姉さま。 

    例えるなら  歌手の「ステファニー」さんだ。

    そんなお姉さまが目の前を通り過ぎる光景。

      

     「軟派なテニススクール受付に、

        どんな有言実行があるのかな~。

       電話応対で予約をとって?

      重ならないように頑張る~かな。」


      渉は誰かを形容詞または

      擬音語に例えるのが 癖だ。

      香は「チャラチャラ」だ。

      ユルいビジュアル系な容貌。

      ギリギリ眉がお洒落な感じ。

  ・・髪と眉は同じ色?だから茶系なのね・・

   部屋ではマナーブックを広げて、

   ブルーチェアに座り夢見る光景は?

   ローズ系のフレングラス漂う、

   テニススクールの受付ロビー。

    電話応対をさっさ・・さっさと行い、

    驚きと微笑みの視線を浴びて、

    すまし顔な香君。

     今日もイメージトレーニングはばっちりだ。


     「軟派な香にはさぴったりだね。

       美人なお姉さんに

        目を奪われて怒られないようにね。」


        ダークブラウンな瞳に

        スーっと伸びた鼻筋にやや菱形な小鼻。

        明るめな茶髪でショートボブヘアー。

        木澄 渉だ。「浜崎あゆみ」さんの大ファン

        真実かどうかは分からないのだが。

         声を聞くと?

  「浜崎あゆみ」さんの歌を歌えそうな声。

        それだけに?普通の男子なら「あ?」と

        文句言いたげな鋭い目付きになり、

        怒りやすい男子なら?

        一度は深く深呼吸して一先ず落ち着く。

       だが?天然並みにネアカで「CUTELY」

       誰もが渉ちゃんなら許しちゃう。



       「木澄さんに言われるまでもなく

         俺は頑張れる男の子なんです。」


           自由気ままな会話なら?三人なら?

        肌から汗が滲み出そうな暑さでも大丈夫。

        だか、一人だけ違ったようだ。

       二人の会話を聞きながら、

       織成が何度も汗を拭う。

       何かにつ気づいた織成が

      背負っていたリュックサックを置き、

      ファスナーを開き?取り出したのは?

      シャトルバスの時刻表だ。

       入学以来身に付けているスウォッチと、

       時刻表を照らし合わせ気づいた事実。

       あと5分程度で二人が乗る

       シャトルバスが到着する。

        

        「あ~!もうすぐバスが到着するから

            香と木澄さんはバス停に向ったら?」



         須立 と木澄が共通して止まない想い。

         実は二人

         同じバス停で乗り降りをするのだ。

         そこから須立は停めてある自転車で

         20分ぐらい経て自宅に到着するらしい。

         木澄が須立から入学して聞いたことだ。

          バスに乗ってる時間は凡そ15分だが?

          幼なじみの木澄でさえ驚く。

         初対面の香なら?なおさらだ。

        同じ想いを織成に抱いていた。

          三人良く並んで講義を受ける際の事。

          講義が終わる5分前に?織成は・・

         ノートや教科書にペンケースを

          リュックサックに収める。

      休憩と移動時間の際?腕時計を一度は視認。

    ・・同じ歳とは思えないくらい几帳面!・・

     「はっ!」とした顔付きは?

      一瞬に瞳が粋って格好良くなるのだが?

      目の前には異性は居なかった。

      何故なら?帰宅部だ父親の教育方針。

      「お母さんの家事を手伝いなさい。」だ。

        母親の見様見真似の

     3年間は伊達じゃないのか?時間間隔に鋭く         今回も?   何となく

       バスが来る時間を言い当てた。


      毎日同じ時刻に到着するシャトルバスに

     乗り降りする香と渉だから、

      時計を一目見たら分かる。

     二人とも立ち上がり、聞こえてくる言葉だ。

    「教えてくれてありがとう 織成。」

     「サンキューだぜ。宗乃助。」


      「こんな事ぐらい構わないさ。

        二人ともさたまに連絡してくれよ。

     俺も連絡するさLINEでいいかな。

    じゃあまたな。」