アマヤドリ本公演「天国への登り方」 | ライター&アクター✳︎葉月✳︎

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近未来、ある地区でのみ認められた「安楽死」を巡るお話。


脚本・演出家の広田さんと評論家のベンジャミン・クリッツァーさんのアフタートークも含めて興味深く、とても楽しませていただきました。


正直、私は群像劇があまり得意ではなく、それもあって演劇鑑賞から離れていた節があります。


しかし本作は多様な意見を交錯させる上で、同時多発的に発せられる台詞を一枚の板の上で処理できるという演劇の利点が存分に活かされていて、そこが面白かったです。


ストーリーに関しては、「特定の区だけで認められている」という設定が、より問題を複雑化させているなと感じました。


医師による自殺幇助にしろ、積極的ないし消極的安楽死にしろ、本来、段階的に議論されるべきものだと思います。

しかし作中世界では一挙に特定の場所でのみ認められている。


この設定により、安楽死というより「自殺教唆」に近い印象を受けました(当然、作中登場人物により否定されていますが)


アフタートークでも某氏の「高齢者集団自決」発言に触れられていましたが、私がおいそれと「安楽死(not 尊厳死)」を肯定的に受け止められないのは、やはり「どこまで本人の意思といえるのか?」というところかなと思います。


認知症の事例に触れてましたけど、鑑賞中に頭にチラついたのは、むしろ人民寺院や太陽寺院、ヘヴンズゲートなどカルトの集団自決事件でしたね。

これらの事件は思想・信仰によるものですが、「自らの意思による死」の客観的な区別がつかないというのはやはり危ういなと感じるので。


心の病に起因する希死念慮は、治療の方向で楽になる手段が今後うまれると良いなと鑑賞しながら考えさせられました。