毎日新聞 2012年12月11日 東京夕刊

 ◇教員経験で理解深め

 今春のセンバツで、ある指導者が注目を浴びた。早鞆(山口)の大越基監督。ダイエー(現ソフトバンク)で11年間プレーした元プロ選手が、就任後わずか2年半で甲子園の土を踏んだからだ。

 「本当にすごいこと」。そう話すのは、都立江戸川(東京)で野球部助監督を務める伊達昌司(37)だ。「自分が指導者になって、初めて高校野球に携わる大変さが分かった」。伊達自身も、阪神や日本ハムなどで6年間プレーし、12勝(7敗9セーブ)を挙げたプロの投手だった。

 かつて高校野球指導者への道は、元プロ選手に閉ざされていた。10年間の教諭実績という条件付きで解禁されたのが84年。94年に5年間、97年に2年間と条件が緩和され、昨年2月には臨時講師など非正規採用での勤務経験も実績の対象に。伊達は、その新基準適用第1号となった。

 伊達は法政二高、法大などを経て、ドラフト2位で阪神に入団。2度のトレードを経て、06年オフに引退。その後、法大で2年間学んで教員免許を取得し、10年4月から都立江戸川で教壇に立つ。臨時講師として神奈川の養護学校で働いたそれまでの1年間が勤務経験と認定され、昨年春に助監督として指導者の道を歩み出した。

 とはいえ、「かつて当たり前だったことが、ここでは当然ではなかった」という。他の部活動と共有するグラウンドではキャッチボールさえままならず、すり切れてテープで補修したボールも初めて目にした。最初に取り組んだのは、練習環境の整備だった。

 セカンドキャリアが社会的な関心を集めている。プロ野球選手も例外ではなく、プロ側はさらなる条件緩和を求め、アマ側に「研修制度」の採用を提案。日本高校野球連盟は、来年1月の再協議に向けて議論の真っ最中だ。伊達は「プロの技術や理論を高校野球に還元できることは素晴らしい」と前置きした上で、言葉を続けた。「(条件緩和の)恩恵を受けた身だが、2年間の現場経験は必要だと思う」。部活動と授業の兼ね合いや個々の生徒との接し方などは、「教育現場に立って初めて理解できるものだから」だ。

 プロとアマの雪解けが進む現状は、元プロから高校野球指導者となった川越東(埼玉)・阿井英二郎監督が来季、日本ハムのヘッドコーチに就任することに象徴される。「どんな成果が出るのか楽しみ」と伊達。高校野球指導者の一人として注目している。(敬称略)=つづく

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 甲子園を目指す高校野球部は全国で約4000。その数を大きく上回る監督や部長、コーチたちが球児の指導にあたっている。第85回記念大会となる来春の選抜高校野球大会(毎日新聞社など主催)を前に、高校野球の今を反映する指導者たちの姿に迫った。