毎日新聞 2012年04月03日 大阪朝刊

 ◇準決勝(2日・阪神甲子園球場)

 ▽午前11時2分開始(観衆2万5000人)

健大高崎(群馬)

  000000010=1

  01000002×=3

大阪桐蔭(大阪)

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 ◇大阪桐蔭3-1健大高崎

 大阪桐蔭が終盤の本塁打攻勢で健大高崎に競り勝った。二回に白水の右前適時打で1点先取。追いつかれた直後の八回、無死から森が左中間ソロ本塁打、1死後に笠松が左越えソロ本塁打を放った。先発・藤浪は五回を除き毎回走者を許しながらも、球威抜群の直球、鋭いスライダーやフォークで要所を締めた。二回の守りで捕手・森が相手の二盗を刺すなど、バッテリーが相手の機動力を封じた。健大高崎は1番・竹内が3打席連続で出塁できず、チーム全体で盗塁ゼロ。得点は八回の竹内の左越えソロ本塁打のみで、好投した三木を援護できなかった。

 ■白球を追って

 ◇健大高崎、金縛り 強肩捕手、一発も

 「走った!」。内野手の声が聞こえる。二回の守備。1死一塁で健大高崎の一塁走者がスタートを切った。3球目、ワンバウンドのカーブ。大阪桐蔭の捕手・森は必死で止めた。「大丈夫」。捕球から送球が二塁に到達するまで1・9秒台という肩で、走者を刺す。森は準々決勝後は連日、ワンバウンドの球を止めて送球する練習を30分~1時間繰り返した。万全の備えが、準決勝の大一番で生きたプレーだった。

 「一つ目の盗塁を刺したのが大きい」と西谷監督が指摘したように、準々決勝まで16盗塁と走りまくった健大高崎は金縛りにあったように走れなくなった。今大会初めて盗塁なしに終わり、大阪桐蔭バッテリーは打者に集中することができた。

 森の働きはこれだけではない。同点にされた直後の八回、先頭で打席に入ると、狙っていた外角高めの直球をジャストミートした。左中間席へ飛び込む決勝のソロ本塁打。「どんぴしゃでした」という一打は、5番・笠松の今大会2本目のアーチの呼び水になった。

 準々決勝の浦和学院戦では自身の捕逸で一時勝ち越しを許し、試合後、藤浪に怒られたという。信頼を取り戻そうと「きょうは自分が引っ張りたかった」。攻守に活躍した2年生捕手は、先輩右腕から「ナイス」とねぎらわれ、笑みを浮かべた。

 初めての春の頂点まであと1勝。「粘り強く戦いたい」。藤浪の全てを引き出し、自らの打棒で栄冠を勝ち取りにいく。

 ◇「横」+「縦」で安定感

 ○…剛腕が安定感を増してきた。健大高崎を本塁打による1点に抑え込んだ大阪桐蔭の藤浪。この試合では、これまで制球に苦しんでいたチェンジアップやフォークがいいところに決まり、スライダーなどの横変化に加え、「縦」を有効に活用した。狙い球を絞らせず、「引き出しが一つ増えた」と笑顔。健大高崎の機動力も「打者を打ち取れば大丈夫」と割り切り、テンポのいい投球を展開した。「決勝でも自分の力を出し切りたい」と藤浪。試合を重ねるごとに成長する大型右腕が、紫紺の優勝旗まで、あと1勝にこぎ着けた。

 ◇粘りのエース、捕まった八回

 ○…「1イニングに2発……。初めてです」。健大高崎のエース左腕・三木はショックを隠さなかった。同点の八回、先頭の森に左中間席に運ばれた。1死後、笠松の打球も左翼席へ。いずれも、ファーストストライクの真っすぐを完璧に捉えられた。身長2メートルに近い大阪桐蔭の藤浪に比べ、170センチの細身。七回まで再三走者を出しながら、緩急巧みに1失点に抑えてきた。「粘れたのは、バックがもり立ててくれたから。もっと、力をつけたい」と、童顔の瞳を潤ませた。

 ■春きらめく

 ◇一発より走りたかった--竹内司中堅手=健大高崎・3年

 振り遅れないことだけを意識してバットを出した。八回無死。「(藤浪の)球が速い分、飛んでいった」という打球は、左翼ポール際、スタンドぎりぎりに飛び込んだ。「素晴らしい投手から打てて良かった」。しかし、本心は少し違う。「本塁打よりも、塁に出た方が相手のダメージが大きかったはず」

 3打席目まで凡退。「藤浪に疲れが出る後半勝負」と読んでいただけに、八回は塁上で投手を揺さぶり、次の打者につなぎたかった。準々決勝までの3試合で4盗塁。機動力野球を掲げるチームの1番打者は、本塁打を放ってなお、満足しなかった。

 3番で出場した昨夏の甲子園後、打順が1番に変わった。50メートルは6秒台と、際立った俊足ではない。「何か武器を持とう」。昨季のパ・リーグ盗塁王、本多雄一(ソフトバンク)のプレーを参考に、塁に到達した瞬間が速く見えるよう、ベースの近くでスライディングをするなど研究を重ねた。

 「1番打者のおもしろさが分かるようになった」。心境の変化が、自分の庭のように駆け回った甲子園で大きく成長した証しだった。