毎日新聞 2012年04月02日 大阪朝刊

 ◇準々決勝(1日・阪神甲子園球場)

 ▽午後1時37分開始(観衆2万5000人)

関東一(東京)

  000200002=4

  000010100=2

横浜(神奈川)

==============

 ◇関東一4-2横浜

 関東一が九回の集中打で競り勝った。四回1死三塁から、秋山の右翼ポール際への2点本塁打で先制。同点の九回は木内、秋山の連打で1死一、二塁の好機を作り、伊藤の左中間適時三塁打で2点勝ち越した。中村は球威のある直球を主体に被安打5、2失点の好投で3試合連続の完投勝ち。横浜は2点を追う五回1死二、三塁、宍倉の適時内野安打で1点。なお一、三塁で高橋が内野安打したが、三塁走者が本塁を踏み損なってアウトになった。七回に尾関の中犠飛で一時同点としたが、粘り強い投球を続けた柳が九回に3連打を浴び力尽きた。

 ◇本塁空過、確信アピール

 左の肩越しに、三塁走者の右足がホームベースをわずかに越えて土を蹴るのが見えた。

 五回、横浜は1点を返し、なお1死一、三塁。高橋が三塁線にセーフティースクイズのバント(記録は内野安打)を転がした。一塁送球を指示して、本塁前方に立った関東一の捕手・松谷は、本塁に駆け込む尾関の足元を注視していた。

 「爪先がホームベースの向こうに着いた。踏んでいない」。松谷の確信だった。三塁を狙った一塁走者をベースカバーに入って刺し、マウンドに戻ろうとする中村に大声で呼び掛けた。「ボールをよこせ」。本塁空過のアピールが球審に認められ、同点の生還は取り消された。

 捕手らしい冷静な観察力。「周囲に目を行き届かせるのがキャッチャーの役割。そう思って、日ごろ、見落としがないように寮の掃除にも注意を払ってきたことが、生かせた」と松谷が相好を崩す。

 リードもさえた。中村の持ち味である高めに浮く速球をきっちり見極めてくる横浜打線に対して、スライダーやチェンジアップを有効に使った。1、2回戦はサインに頑として首を振り、速球勝負を主張した中村も、この日は「だいぶ反応してくれた」。終盤の反撃を同点まででしのぎ、九回の勝ち越しにつなげた。

 試合後、打者との勝負しか目になく、「暴れ馬」と松谷に評される中村が、神妙に言った。「(五回の本塁空過を)自分は全然見ていなくて、松谷さんに助けられた。頼りになります」。ビッグプレーで、25年ぶりの4強とエースの心をつかんだ。【藤倉聡子】

 ◇エース・柳、悔やむ失投

 ○…横浜の柳は九回の失投を悔やんだ。1死から2連打でピンチを招くと、伊藤にファウルで4球粘られ、コースが甘くなった6球目のスライダーを左中間へ運ばれた。「ボール球を使えばよかった。勝負を急いで甘く入ってしまった」。昨夏の甲子園でも智弁学園戦の九回、相手の逆転のきっかけとなる安打を許し、降板となった。「今回も一番打たれてはいけない九回に打たれてしまった」と柳。勝負どころの制球力を課題に挙げ、「一から鍛え直したい」と再起を誓った。

 ◇攻守に「4番」

 ○…関東一の4番・秋山が攻守にわたる活躍で、4強入りに大きく貢献した。四回1死三塁、インコース低めの直球を振り抜き、自身公式戦初本塁打となる先制2ラン。九回1死一塁では中前打で好機を広げ、伊藤の勝ち越し打を呼び込んだ。八回の守備では浅い中飛をダイビングキャッチ。力投する2年生エースのため「何とか先制点がほしかった」と本塁打を振り返った主砲は、「次もチーム一丸で戦いたい」と言葉に力を込めた。

 ■春きらめく

 ◇失った得点、バットで奪還--尾関一旗捕手=横浜・3年

 目深にかぶった帽子の下で、懸命に落ちる涙をこらえていた。

 「まだ、(試合が)終わっていない気がする」

 悲劇の主人公に転じたのは五回に1点差と迫った直後。三塁から高橋のセーフティースクイズでホームに駆け込み、同点の走者になるはずが、「本塁踏み損ない」でアウト。生還なら、相手に傾いた流れを引き留めることができた。それだけに、「踏んだ、と思う」と振り返るのが精いっぱいだった。

 ただ、バットで汚名返上は果たした。1点を追う七回無死一、三塁で、関東一・中村の速球をたたき、一時は同点となる中犠飛。「自分のせいで失った得点。最低限の仕事はできた」。勝ち越し打を浴びた九回も「自分の甘さが配球に出てしまった」と、捕手として、主将として、エースの柳をかばい続けた。

 「一番苦労し、泣きながら練習していた」とは渡辺監督による評。自責の念にかられたはずだが、ナインの「気にするな」との言葉に「一人じゃない、と自分に言い聞かせられた」。苦い思い出が残った甲子園にも、「最高の経験を与えてもらい感謝している」。そう締めくくった時、涙は乾いていた。