毎日新聞 2012年04月03日 地方版
25年ぶりの決勝進出はならなかった。第84回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)第11日の2日、関東一は準決勝で光星学院(青森)に1-6で敗れた。試合は醍醐駿平投手(2年)が初先発し5回を3失点、続く中村祐太投手(同)が終盤に3点を失う苦しい展開に。それでも最終回に1点を返すなど、粘り強さと堅守で最後まで観衆を沸かせた。強豪を次々打ち負かし旋風を起こした選手たちに、スタンドは夏に向け大きな期待に胸を膨らませた。
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▽準決勝
関東一 000000001=1
光星学院 00021003×=6
「醍醐は準備万端だと思う。力を発揮してくれるはず」
米沢貴光監督が先発のマウンドに送ったのは、3試合連続完投勝利の中村投手ではなく、醍醐投手だった。
昨秋の神宮大会を制するなど、強打で鳴らす光星学院打線に、スタンドで見つめる醍醐投手の母香さん(41)は不安そう。「小学校の時から一回崩れると止まらない時もあったから」。そんな心配をよそに、醍醐投手は苦手な立ち上がりを無難に3者凡退にしとめる。父武明さん(43)も「思ったより落ち着いているみたい」とほっとした表情を浮かべる。
スタンドの一角には60歳以上の野球部OBで作る「仲良し応援団」約30人の姿も。半世紀近く野球部を応援しているという元投手・主将の吉房延宣さん(76)は「今年のチームは準優勝した25年前、春夏甲子園に出場した4年前のチームに次いで3番目に良い。今は投手に頼っている部分が大きいが、期待できるのでは」と太鼓判を押す。マウンドの醍醐投手には「五回まで無失点で切り抜けてほしいね」。
しかし四回に本塁打などで2点、五回に1点を失う。スタンドで観戦する臼井健太郎コーチも不安な様子。「醍醐はよく投げている。終盤まで粘ったら好機は必ず回ってきます」と力を込める。
六回裏、投手交代で中村投手が告げられると、醍醐投手へのねぎらいと、中村投手への期待からスタンドは総立ちに。しかし、連戦の疲れからか、中村投手は八回に3点を失い0-6に。重苦しい展開となったが、ナインに諦めの表情はない。
最終回、吉江将一選手(3年)が三塁打で出塁し、スタンドは息を吹き返す。野球部の小出壌応援団長(同)がメガホンをたたいて跳びはね、ブラスバンド部の赤星航大部長(同)は顔を赤らめてスーザフォンを吹く。続く安西航洋選手(同)が中前安打を放つと、スタンドのボルテージは最高潮になった。
しかし、追い上げむなしく、ゲームセットに。一瞬静まりかえったスタンドは、すぐに万雷の拍手に包まれた。チームが最後まで見せた粘り強さに、夏への期待は高まる一方だった。
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■白球譜
◇高い理想追いかけ--主将・木内準祥二塁手(3年)
試合終了の瞬間まで、ベンチから身を乗り出して勝利のために戦った。「自分の打順まで回ってこい」と念じ続けたが、かなわなかった。表情に涙はなく、試合終了後、ナインを率いて堂々と応援団に一礼をした。
冬場から不振に苦しんだ。甲子園でも初戦は好機に打席が回ってきたが凡退。「打席に入っても、しっくりこない」。理想のイメージとかけ離れていた。佐久間和人コーチには「何が悪いか分からない」と珍しく愚痴をこぼしたほど。黙々とバットを振り続けた。
中学時代にリトルとシニアリーグでそれぞれ全国優勝をした経験を持つ。今は寮で生活するが、スタンドに応援に来た父禎纉さん(45)は、「家にいた時はいつも枕元にグラブやボールを置いていた。野球のことを忘れない様子だった」と振り返る。思い立ったら頑固なまでに一途だ。
「いつかは打てる。安心して打席に立て」。監督やコーチの言葉が楽にしてくれた。2回戦以降は毎試合安打を放ち暗いトンネルを脱したが、自分のプレーへの満足感はない。「たくさんの好機をつぶしてしまったから……」。どこまでも高い理想を追いかけ、この夏、「全国制覇」という忘れ物を取りに戻るつもりだ。
〔都内版〕