毎日新聞 2012年03月07日 地方版

 北国の長い冬が終わり、季節は雪解けに向かう。ドロドロにぬかるんだ道が、ひと雨ごとに固まり始めるころ「球春」がやってくる。センバツ高校野球は、北国に暮らす人々が寒さの中に春を感じるイベントの一つだ。

 今年のセンバツには東日本大震災の津波被害にあった東北から、偶然だが太平洋に面した青森、岩手、宮城、福島の4校が出場する。東北としては史上最多タイ。大震災から1年。サクラがほころぶ甲子園で、元気にプレーする東北の球児たちの姿が目に浮かぶ。

 「都をば霞(かすみ)とともにたちしかど秋風ぞ吹く白河の関」。能因が詠んだ白河は福島県。しばしば「東北の玄関口」に例えられる。「白河以北一山(ひとやま)百文」は東北をさげすんだ言葉。そして高校野球では「優勝旗の白河越え」。いまだ優勝と縁がない東北の高校野球を語る時、しばしば登場するフレーズだ。


 残念ながら静岡県勢の出場がない今年のセンバツ。それなら東北勢に肩入れしてみるのはどうだろう。例年になく厳しかった今冬。東北勢にはぜひ甲子園に「春一番」を吹かせてもらいたい。紫紺の大旗が白河を越え、雪解けの北国に翻る。勝負は時の運とはいえ、「そろそろ」いや「今年こそ」。夢が膨らむ春3月。