◇四半世紀の信頼--保護者会長、上原祐二さん(42)

 「青山に力をお与えください」--。昨年10月25日の九州地区高校野球大会準々決勝の朝、別府青山野球部保護者会長の上原祐二さん(42)=別府市馬場=は近くの火男火売(ほのおほのめ)神社に出向いた。かしわ手を打って祈った。公式戦がある朝、誰にも見つからぬよう必ず必勝祈願。チームは3-2で福工大城東を降し、センバツ出場に前進した。長男の上原大樹主将が夢をかなえてくれた。

 同年8月、会長に。開口一番、「甲子園に行くつもりでいてください。九州大会が大分で開催される今年はミラクルチャンスです」と集まった約40人の保護者にハッパをかけた。大きくうなずく人もいれば、「何を言ってるんだろう」という表情の人も。05年夏の夢舞台から6年。保護者の間にも「甲子園へ」という意識が消えかけていた。試合で応援に来る人も少なかった。

 しかし上原さんは伊藤弘明監督(42)なら可能だと考えていた。「監督を信じよう」と保護者に伝え続けた。親は子どもがかわいいから指導に口出しして足を引っ張ってしまうこともある。「甲子園に行くチームに育てるには、前に出ず、指導を監督に委ねる親の姿勢も大事」。監督に意見がある時は、まず上原会長が相談に乗り、その後、伊藤監督と膝を交えて話し合った。橋渡し役に徹した。

 そんな信頼関係を築けているのは、四半世紀前、伊藤監督と別府羽室台の同級生だったからだ。「甲子園に行きたい」という長男に「信頼できる伊藤君に預けたい」と青山進学を勧めた。しばらく考えた上原主将は素直にうなずいた。後は長男にも口を出さない。応援もスタンドの最後列。「それが本来の姿。子どもは十分頑張っている。試合の日も『頑張って』でなく、そっと家から送り出す」

 甲子園に合わせ、保護者会のウインドブレーカーや帽子のマークを「A」に変えた。「子どもたちの活躍で有名なマークになればいいなぁ」とにっこり。上原さんはまた火男火売神社に願掛けに行く。

毎日新聞 2012年3月3日 地方版