野球帽が何度も空へ舞い上がった。第84回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高野連主催)への3年ぶり3回目の出場を決めた神村学園(いちき串木野市)。全国制覇を目標に日々厳しい練習に励んできた選手たちは、電話で届いた「春の知らせ」に喜びを分かちあい、大舞台での活躍を誓った。

 数々のトロフィーや賞状が飾られた神村学園の展示室。神村勲学園長、山本常夫監督が待機して電話を待った。約30人の報道陣が待ち構える中、神村学園長は「そろそろかな」と笑顔を作り、山本監督は緊張した様子で、首を回すなどの仕草を繰り返した。

 午後3時39分、電話が鳴り響いた。全員が静まりかえって見つめる中、神村学園長は「有り難くお受けいたします」と笑顔で応じた。

 中庭で待機していた選手たちには神村学園長が出場決定を伝えた。神村学園長は「鹿児島、九州の代表として、甲子園で神村学園らしい試合をみせてほしい」と激励。大勢の教員や保護者、生徒たちが祝福する中、ナインたちは弥栄翼主将(2年)の「せーの!」のかけ声で、帽子を何度も高く投げて喜びを表現。さらに監督を高々と胴上げし、感謝の思いを伝えた。

 センバツ出場の喜びをかみしめた後、選手たちは徐々に表情を引き締めた。昨夏の甲子園でも登板した柿沢貴裕投手(2年)は「夏は初戦で負けた分、今度は絶対に結果を出したい。センバツまで気を引き締めて練習に励みたい」。待ちわびた「春」へ向けて、神村学園ナインは新たなスタートを切った。

 ◇市民ら号外手に神村の活躍期待

 「甲子園で旋風を巻き起こしてほしい」。神村学園のセンバツ出場決定を使える毎日新聞の号外約2000部が鹿児島市のJR鹿児島中央駅前や天文館などで配られた。号外を手にした市民らは、県勢の活躍を期待した。

 号外は、新チーム発足後、昨年秋の九州大会県予選からの公式戦の戦績やナインの氏名などを紹介。九州大会で優勝し、明治神宮大会に勝ち進んで活躍した選手たちの写真を見て、受け取った人たちは「甲子園でも勝ち上がってほしいですね」と話していた。

毎日新聞 2012年1月28日 地方版