高1の2学期の終わりごろ、学校で三者面談があった後、父親から「大学はどうするんだ」と聞かれました。まだ決めてないと答えると、「自分は3浪して東京芸大の建築科に入った」と言うんです。そして「学歴をどうこう言うつもりはないし、大学を出てからのことが大事だけど、人は驚くほど出身大学を聞く。自分は大学(名)に助けられたかもしれない。いい大学にいくに越したことはない」と。これは結構、説得力がありまして、僕も東京芸大の建築科を志すことにしました。不純な動機でしたが、今考えると、父親の言葉は本当でしたね。それを聞き逃さなかった僕もえらかったと思います。
芸大の入試は実技(絵と立体構成)が重視されるので、高1の冬に絵の予備校に入りました。共通一次(大学入試センター試験の前身)は英語と数学、二次試験は世界史と物理を受けました。絵の勉強で忙しかったので、こちらは、過去問の問題集を買ってきてとにかく暗記しました。「択一問題は反射神経だ」と、何かで読んだので、カードを買ってきて、表に問題と選択肢を、裏に答えを書いて、電車の中で覚えました。
問題集を最初から最後まで繰り返し解いて、ほぼ100%解けるようになると、不思議なもので、ぼんやりと正解が浮かび上がってくるようになって、模試の成績も上がったんです。択一問題の選択肢の作り方にも、出題者の作為があります。それを読み取る訓練ができたんですね。まじめに勉強もしたんですけど、始めからこの方法を取っていればよかった。二次試験も過去問につきると思います。
参考書は「あんちょこ」(教科書を解説した参考書)を使いました。答えを知らずに一生懸命考えた方が解く力がつくと言われますが、僕は答えを知ってから、どうしてその答えになるのか、逆算していくのが好きなんです。その方が頭に入るし、悩む時間が無駄で嫌いなので、割り切って徹底しました。
受験勉強で積み上げた努力の仕方は、後の勉強にも役に立っています。例えば、あんちょこを使った勉強法は、結果から、なぜそうなっているのかを考えるので、世の中をロジカルに見るために役立ちます。考える力を自然に養ったかもしれません。高3の1年間は寝ても覚めても受験のことを考えていたので、一心不乱ということも身についたんじゃないかとも思います。
受験は、与えられた条件の中での対応力とか戦略性を問われているので、学力や知力を問われているわけじゃない。学校の勉強とは別だと考えた方がいいと思います、その方が、学校で成績が悪い子もがんばれるし、成績が良くても気を抜かない。問題の形式はほぼ明らかになっているわけで、ルールの枠内でどのくらい成績を残せるかというゲームなんですよ。これは受験だけではなく、社会に出てからも必要な能力だと思います。ルールのない戦いもありますけど、ルールのある戦いも世の中にはたくさんありますから。
<略歴>1968年東京都生まれ。東京芸大美術学部建築学科卒。放送作家、テレビ番組制作、アイドルグループ「AKB48」のプロデュースなどを手がける。著書「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」がベストセラーに。
2012年1月16日