今年は、高校野球の世界でも「東日本大震災」が忘れられることはなかった。

 高校野球を夏の長野大会から甲子園まで約1カ月間、取材した。球児たちは度々、震災の犠牲者への追悼の言葉を語った。長野大会の開会式では、震災に触れ「日本中に勇気と感動を届けるためにも精いっぱいプレーすることを誓います」と選手宣誓した。球児たちのヘルメットには「がんばろう!日本」の文字が添えられた。

 甲子園では長野代表の都市大塩尻の古谷拓幹主将(3年)は開会式後「被災者に勇気と感動を与えられるように一生懸命プレーしたい」と気合を入れた。

 若者が追悼の気持ちを表すことは尊い。高校野球は勝敗だけでなく、人間教育の一環だからこそ、懸命なプレーがファンの胸を打つ。甲子園を心待ちにする被災地の人たちを励ますことも大切だ。ただ、プレーに集中する球児に、過度に「震災」の重みを背負わせることにならないか、心配になった。

 自分も含め、取材の“過剰さ”が気になった。甲子園でマスコミ各社は「震災もの探し」に躍起になっていた。上司から「被災地から応援にきている人を探してこい」と取材の指示を受け、戸惑うこともあった。マスコミに取り上げられることより、応援に集中したい被災者もいるだろう。

 震災から約9カ月たった。12月にはラグビーや駅伝など高校スポーツの全国大会がある。野球と同じように「震災」への追悼の思いを表すことは大切だ。一方で、練習に打ち込んできた選手たちに試合本番は、伸び伸びとスポーツを楽しんでほしい。若者が無心に走り、一生懸命にプレーする姿こそ、被災者の心を温めるだろう。

毎日新聞 2011年12月10日 地方版