プロ野球西武の菊池雄星投手(20)と花巻東高(岩手)野球部時代のチームメートで、09年の甲子園大会でレギュラーとして活躍した日体大野球部2年の佐藤涼平さん(20)が、横浜市内の大学寮近くの路上で首をつっているのが発見された。その後、搬送先で亡くなり7日、同市内で葬儀が営まれた。将来を悲観したメモが見つかっており、県警は自殺とみている。

 身長155センチと小柄ながら俊敏な動きと驚異的な粘りで出塁し、09年春の甲子園で準優勝、夏の4強入りに大きく貢献した佐藤さん。地元東北の人たちはもちろん、全国の高校野球ファンの記憶に残っている好選手が、20歳の若さで自ら命を絶った。

 神奈川県警と青葉署によると、佐藤さんは今月4日午後10時15分ごろ、横浜市青葉区にある大学寮近くの電柱に野球用のベルトをかけ、首をつっているのを通りかかった女性に発見された。病院に搬送されたが、5日午前0時34分死亡が確認された。残されたメモには、母親と兄弟にわびるような内容が書かれていたという。

 7日午後、佐藤さんの葬儀に参列した計約80人の野球部員たちは沈痛な表情で寮に戻った。野球部関係者は「4日も通常通り練習をこなしていた。悩んでいた様子もなくなぜだか分からない」と困惑していた。東日本大震災で大きな被害を受けた岩手県宮古市出身だが「ご家族も無事で、震災で精神的に参っているということはなかった」という。

 佐藤さんが甲子園で躍動したのは3年前。ひときわ注目を浴びたのは夏の準々決勝、明豊(大分)戦。同点の延長十回表、1死一塁から送りバントした際に相手野手と交錯し、担架で退場。送った走者は次打者のヒットで生還し、これが決勝点になった。佐藤さんは頭部打撲と診察されながら「出たい!」と医務室を飛び出し十回裏の守備につき、拍手を浴びた。

 卒業後に推薦入学した日体大でも硬式野球部に所属。だが、常時ベンチ入りするほどの活躍はできず、周囲では「期待とのギャップに苦しんでいたかもしれない」と指摘する声も。最近、部内で重責を任されるようになった佐藤さんについて、親族が「どうも重荷に感じているようだ」と心配していたとの話もある。

 青葉署では、詳細について「事件性がないので何もお話しすることはない」としている。

 ≪夜は真っ暗に≫現場は大学寮の裏手に通っている、人通りの少ない脇道。交差する大通りの交通量の多さとは対照的で、周辺を樹木に覆われ、ひっそりとしている。街路灯もなく「夜には真っ暗になる」と近所の住人。大通りとの交差点付近に住む女性は「あんなところで自殺があったんですか?知らなかった。警察が来てたことも気付かなかった」と驚いていた。

 ≪西武雄星もショック≫西武・菊池は元チームメートの突然の死に困惑の表情を浮かべた。この日は埼玉県所沢市の西武第2球場で2軍練習に参加し、ランニングなどをこなした。練習後、報道陣の問いかけに「まだ正確な事実が分からないので…」と語るにとどまり、ショックを受けている様子だった。(スポニチ)

2011年7月8日