話しかけると、はにかんだ顔でうつむきながら、心細そうに通訳の知念誠さんを探す。高校野球の北埼玉大会が開幕して間もなくに初めて会ったブラジルからの留学生、奥田ペドロ選手(本庄一・2年)だ。恥ずかしがり屋の普通の高校生だった。
しかし、甲子園で見た奥田選手は別人のようだった。1回戦でサヨナラ本塁打を放ち、お立ち台に立つ彼は輝いていた。知念さんを探すこともなく、つたない日本語ながら「ホームランサヨナラ、絶対、うれしいです」と堂々と話していた。
敗退した2回戦後の奥田選手は、より成長して見えた。真っ赤に泣いた目で最初に口にしたのは、仲間への気遣いだった。「ピッチャーよかった。でも(自分が)守備で体が動かなかった」。自分の安打は一切口にせず、失点した投手をかばう。大黒柱としての自覚が芽生えた姿がそこにはあった。
甲子園というところは、こんなにも高校生を大きく成長させるのかと実感した。
毎日新聞 2008年8月23日 地方版