◆日本文理大付(佐伯市)
◇楽しんで流れ引き寄せ
「サインを勘違いしている」。07年夏の大分大会の3回戦、大分工戦。4-4で迎えた七回裏で2死一、三塁のピンチ。捕手の向畑竜斗主将(3年)はタイムを取るかどうかで悩んだ。満塁策を取るため渡辺剛投手(当時3年)には敬遠のサインを出していた。しかし渡辺投手は「一塁けん制」を繰り返し、勝負するつもりでいた。向畑主将は、その流れに任せ、そのまま投球させた。結果、2点タイムリーという決勝打を打たれた。
今春の九州大会予選で優勝し、力を見せつけた文理大付。しかしその前後の公式戦、昨秋の九州大会予選と春の県選手権大会ではいずれも相性が悪いという中津工と対戦し、初戦敗退している。「波」のあるチームと言えるかも知れない。それだけに、キャプテンのチームにおける役割は大きく、向畑主将は雰囲気や選手の気持ちを敏感に察知する。
1月に就任した河本啓靖監督から試合のリズムを使い分けることを学んだ。「いい流れの時」は速く、「悪い流れの時」は落ち着いて、とコントロールするようになった。これまで四球やエラーで先頭バッターに出塁されると必ずといっていいほど点を取られ、失点が始まると1イニングで大量得点されていたが春以降はその傾向がなくなった。
「お前普段も打てんやろうが!今日はなんでへこんでんだ?」。試合中に向畑主将の口からこんな冗談交じりの毒舌が飛び出すこともある。
しかしこの一言がヒットが出ずに暗い気分で次打席にいる選手の気持ちを楽にさせるのだ。「ナインひとりひとりがどんな気持ちでいるか、どう対応するのがベストなのかがわかる」という。
昨年の大分大会での大分工戦。後から考えると渡辺投手はサインを見間違えるほど、気持ちは追い込まれていたのだ。「タイムを取り、悪い流れを断ち切るべきだった」と3年間の高校野球生活で一番悔やんでいることだ。
「笑顔で楽しく試合をする自分たちらしさを出して大分大会に臨みたい」。向畑主将はそのことが「流れ」を引き寄せることにつながると考えている。(おわり)
毎日新聞 2008年7月5日(5日17時2分)