アラブ人が悪いことをしたら身内は・・・ | 人差し指のブログ

人差し指のブログ

パソコンが苦手な年金生活者です
本を読んで面白かったところを紹介します

『 人間の目利き アラブから学ぶ「人生の読み手」 になる方法 』

曽野綾子 ( その・あやこ 1931~ )

吉村作治 ( よしむら・さくじ 1943~ )

株式会社講談社 2014年12月発行・より

 

 

 

吉村 基本的にはイスラムは 「ウンマ」 の思想なんです。

 

    ウンマというのは自分の所属するコミュニティー(共同体)のことで、

    イスラム教という宗教でカバーされているけれど、自分たちの血族

    でなんぼの世界なんです。

 

    (略)

 

曽野 サウジアラビアって、「サウド家のアラビア」 という意味ですもの

    ね。

 

    アラブ諸国にはそれぞれ国旗はあるけれど、「国家」 という意識が

    あるのは、オリンピックのときとサッカーのワールドカップのときぐら

    いでしょう?

 

 

吉村 まさしくそうです。

 

 

曽野 みんな、ウンマの利益で動いているんですね。

 

    それを説明するために私がつくった笑い話なんですけど、一族の

    ひとりが悪いことをするでしょう。

    そうすると、一族はあらゆる手段を講じてその人を逃がす。

 

 

    まず親戚の農夫が持っているトラックの荷台にタマネギだのオレン

    ジだのを積んで、その荷物の間に犯人を隠す。

 

    運転するのもいとこで、逃げる途中で関門に引っかかる。

 

    でも検問をやっているのもいとこだから、難なく国境まで逃げ延び

    る。

 

    その国境の審査官もいとこで、国境を越えたところにもいとこが

    いて、無事に隣の国で運転をしているいとこのタクシーに乗込んで、

    結局、捕まることはありませんでした、という話なの(笑)。

 

 

吉村 わかりやすくて、正しい説明ですよ。

    それがひとつの考え方で、もうひとつある。

 

    悪いことをしたやつを捕まえて、自分たちのウンマを守るという方法

    もある。

 

 

曽野 突き出すの?

 

 

吉村 そうです。そのときに真犯人ではなくて、こいつなら突き出しても

    いいと思う者を身代わりにする。

 

    表現は悪いけど、基本的には日本のやくざの世界と同じ、アラブも

    そういう強い同族意識から成り立っている。

 

 

曽野 それでうまく厄介者(やっかいもの)を片づけるわけですね。

    村には絶対的な掟(おきて)があって、それを破れないわけですね

 

 

吉村 それに従わなかったら殺されるか、殺されたくなかったら出ていく

    しかない。

 

    ウンマに所属している限り、ウンマの掟は絶対に従わなくてはいけ

    ないけれど、その代わり、何かあっってもウンマに守ってもらえる

    わけです。

 

 

 

 

                           1月6日の春日大社参道