「 丸谷才一と17人の ちかごろジャーナリズム大批判 」
著者 丸谷才一ほか
青土社 1994年5月発行・より
~ マラソンの実況は日曜のテレビの花 ~
諸井薫 (もろい・かおる 作家)
横澤彪 (よこざわ・たけし フジテレビ・プロデューサー)
丸谷 日曜の午後のテレビというと、マラソン中継がいちばん華やかな
感じがします。
テレビの送り手の立場からすると、どんな気持ちでやっているもの
なんですか。
横澤 マラソンは、ひじょうに高い視聴率が見込める番組なんです。
普通のマラソンで20パーセントぐらい、有名選手が出るレースだと
25パーセントを超えることがあります。
丸谷 それは、すごい。
横澤 視聴率が25パーセントを超えますと、社会現象と判断していいと
思うんですね。
そういう現象が、ときどき起こっています。
駅伝も人気がありますね。
諸井 ちなみに 「笑っていいとも!」 は、どのぐらいなんですか。
横澤 ふつうの日で、14~5パーセントでしょう。
日曜日の増刊号は、らくに20パーセントを超えますね。
もうひとつ、テレビ局の側からいうと、マラソンは、その開催する
場所とか地域を含めまして、地元を巻き込んだひとつの大きな
イベントとして考えられるんです。
最近はゼッケンに企業の名前などをつけますので、
わりとスポンサーがつきやすいということもあります。
お金の問題が発生するのは、ごく限られた外国の有名招待選手
だけですから、カール・ルイスなどに比べて、招待料というんでしょう
か、早い話が裏金がはるかに安いんですね。
カール・ルイスは、アメリカの男子元陸上競技選手。1979年から1996年のオリンピック終了までに、10のオリンピックメダル(うち9つが金メダル)と10の世界選手権メダル(うち8つが金メダル)を獲得した。 ~wikipedia
ただし、無理やり連れて来て、「とりあえず出てください」 と頼むと、
その選手はだいたい途中で走るのをやめてしまいますから、「あ、
これは無理して頼んだな」 ということが、すぐに分かるわけです。
丸谷 あれは、そうなんですか。
諸井 それから新記録を達成した場合には、ボーナスを何万ドルと出る。
コース間のラップ・タイムについても・・・・。
横澤 5キロごとのね。
諸井 そう、あれを更新すると、またボーナスが出る。
ボーナスが出そうもないと、途中でリタイアしちゃうやつがいるそう
ですね。
日本の選手も、もうそろそろ金の問題と無縁ではない時代を迎え
つつあるのではないでしょうか。
横澤 表沙汰になっていませんけれども、何らかの形ではあるでしょうね。
(1992年9月24日)
10月25日の奈良公園