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「 父は子に何ができるか われらが体験的教育論 」

渡部昇一 (わたなべ しょういち 1930~2017)

屋山太郎 (ややま たろう 1932~)

PHP研究所 2001年1月発行・より

 

 

 

 

 

屋山 親はこれから子供たちに何を教えていけばいいのか、そして学校の

    教育はどのような方向へ行くべきなのか。

 

    それを考えるときに、社会全体の方向性を見据える必要があると

    思います。

 

 

    たとえば、これから社会に出て学歴で食おうとすると、結局アテが

    外れる、という世の中になっています。

 

 

    私が時事通信社に入ったとき、十二,三人が新卒で採用されたんで

    すが、半分は東大出身でした。

 

 

    東大を出て新聞社や通信社に入ることほどバカなことはないんです

    よ。

    つまり、学歴で得をすることは何もない。

 

 

    それを承知で入ってきている連中だから、わりといいやつがいる。

 

 

    要するに、自分で勝負してやろうと思うやつが記者になっている

    わけです。

 

 

    記者のセンスがあったかどうかは別ににして、精神構造としては

    とてもいいんです。

 

 

    ところが、学歴で食おうとする人間は、たとえば大手銀行に入る。

    でも本来、銀行員の能力なんて学歴じゃわからないでしょう。

 

 

渡部 そうです。金融のことは武富士にでも入らなきゃわかりませんよ

     (笑)。

 

 

 武富士  ~   1966年(昭和41年)、武井保雄によって創業された富士商事が前身である。団地金融をきっかけとして高利貸しをしていき、芸能人を多用したテレビCMの大量出稿やル・マン24時間レースへのスポンサーなどで注目を集めるなど、「サラ金」に対するイメージ向上戦略などを行い、創業者である武井が一代で消費者金融業界のトップの座まで築きあげた。

2000年代後半には、他の大手消費者金融同様に過払い請求の増加などによる業績と資金繰りの悪化が伝えられ、2010年(平成22年)には東京地方裁判所に会社更生法の適用を申請し、受理された  ~  wikipedia

 

 

屋山 新聞社のなかでは朝日新聞社にその傾向があるんですが、何年

    入社のやつはどうだとか、どこの卒業だとか、役所のようなことばか

    り言っている。

 

 

    自分の父親がそういうことだけを考えて入社し、息子の自分もそれ

    を見習ってそのコースを歩いた人たちが、いまはほとんど崩れかけ

    ているんじゃないですか。

 

 

渡部 と思いますね。

 

 

屋山 たとえば霞ヶ関の天下り連中が事業会社に行く例がありますが、

    天下りを受け入れた会社の社長に聞くと、

       「あんな者は全く使い物にならない。

       頭はよかったのか知らんが、商売のセンスというものは三十年

       磨いてようやく光ってくるものだ。

       いままで何十年もなにも磨いてこなかったやつは、いくら偏差

       値が高かろうが、頭がよかろうが、商売ができるはずがない。

       だから、仕事はさせない」 と言っているんです。

 

 

渡部 銀行にしても同じことで、ほんとうは金貸しのセンスがなければ駄目

    でしょう。

 

 

    東大法学部でどんないい成績とったところで、金を貸すセンスとは

    別だと思うんです。

 

 

    ところがつい数年前の金融崩壊までは、大蔵省が銀行を潰さないと

    いうことになってましたから、潰れないかぎりは、年功序列と学校格

    差でよかったわけです。

 

 

     そうするとどうなるかというと、大蔵省自体が東大法学部の秀才の

    集まりですから、その大蔵省の意図を汲むことが銀行にとって一番

    重要になる。

 

 

    どの銀行も金利は同じだし、競争がなくて、潰れる、潰れないは関

    係なくなっているわけですから、大蔵省の意図を斟酌(しんしゃく)する

    MOF担(モフたん)、大蔵省担当が銀行では一番重要になるわけです。

 

 

~ウィキペディア(Wikipedia)より~

MOF担(モフたん)とは、日本都市銀行証券会社などの大手金融機関のミドルオフィスに所属し、当時金融行政も担っていた大蔵省に頻繁に出入りし様々な情報を官僚から聞き出す「対大蔵省折衝担当者」の俗称である。

 

 

    MOF担になって、軽蔑されないで大蔵省の人を接待できる人とと

    いうのは、東大か、京大、一橋ぐらい、それが銀行の出世頭になる

    わけです。

 

 

     つまり、MOF担というのは、あからさまな言葉で言えば接待業なん

    ですよ。

 

 

    接待業コースの人が社長になっているのがいまの金融業なんだか

    ら、ルービンみたいな、ウォール・ストリートの儲け頭とやり合って

    勝てるわけがない。

 

ロバート・エドワード・ルービンRobert Edward Rubin1938年 )とは、アメリカ合衆国の銀行家、財政家である。ビル・クリントン政権1期目と2期目で70代目アメリカ合衆国財務長官、初代アメリカ合衆国国家経済会議委員長を歴任した。            ~ wikipadeia

 

    だから、いいように剥ぎ取られる。

 

 

 

 

 

                              4月3日の奈良公園