「 知っているようで知らない これが本当の中国 33のツボ 」
石平 (せき へい 1962~)
株式会社海竜社 2008年3月発行・より
たとえば一人の若者が入党しようと思う場合、彼はまず、自分が所属する機構や団体の身近な支部に入党申請を行う。
そして支部は、入党申請を受理してからしばらく、申請者に対する慎重な審査を行う。
審査の方法はもちろん、この若者の日頃の行いをじっと見て、彼が党に対して十分な忠誠心をもつかどうかを判断する。
審査期間は通常二年間であるが、その期間中、申請者の一挙手一投足が党の理念と方針に敵(かな)っているかどうかが審査のポイントとなるのである。
その中で、出世志向の強い若者たちは、この二年間の厳しい審査期間を何とかパスするために、さまざまな工夫を強いられているのである。
本当の自分を殺して党の理念と方針にぴったりと合わせて行動するのも工夫の一つだし、実際は全然信じていない 「共産主義の理想」に対して、心からの帰依(きえ)と傾倒を示して見せるのも工夫の一つである。
あるいは一番の近道として、審査の責任者である支部長に取り入り、その歓心を買うという方法もある。
すべての党員がこのような方法で入党したとは限らないが、とにかくこの中国では、自分を装うのが得意な人、人に取り入るのが上手な人、あるいは目的のために手段を選ばないような人ほど、共産党に入党して幹部となるのである。
少なくとも、ただの 「良い人」 や真面目さだけが取り柄の人々、あるいは自分を装うのを潔いとしない人々は、たいてい党とは無縁な存在である。
1月10日 奈良市内にて撮影