「源氏物語」が嫌いな人たち   | 人差し指のブログ

人差し指のブログ

パソコンが苦手な年金生活者です
本を読んで面白かったところを紹介します

「 久保田淳座談集 心あひの風 いま、古典を読む 」

久保田淳(じゅん) (国文学者1933~) 

有限会社 笠間書院 2004年2月発行・より

 

 

~  古典と私の人生  秋山虔(けん) (国文学者 1924~2015)

 

 

 

 

秋山  『源氏(物語)』 嫌いというのが たくさんいるんですよ。

 

 

     たとえば内村鑑三、それから高山樗牛、斎藤緑雨(りょくう)

 

 

     正宗白鳥(まさむねはくちょう)は主語がなくてフラフラしたような文章だ

     と書いてありますが、欧文脈で教養を培った人には、ああいうもの

     は たまらないんじゃないですか。

 

 

久保田 正宗白鳥がアーサー・ウエリーの英訳を読んで 『源氏』 は

      おもしろいと思い始めたという話は有名ですね。

 

 

秋山  それから森鷗外が 『源氏』 嫌いね。

 

 

久保田 そうですか。

      鷗外は伝統的なものに理解がありそうに思いますけど・・・・。

 

 

秋山  むしろ 『平家(物語)』 みたいなものが好きなんじゃないですか。

 

 

久保田 私は(井原)西鶴がだめです。

 

 

     大学に入った年と三年と西鶴の講読や演習がありましたけれど、

     どうしても おもしろくないんです。

 

 

     結局近世の上方(かみがた)文学がわからないんですね。

 

 

     東京育ちだから、悔しいけれど、西コンプレックスがあるんでしょ

     う。

 

 

     とくに大阪的な感覚がゼロなんだと思うのです。

 

 

     私にとって、西日本の文化は、外国文化と同じようにすら思えるの

     ですから。

 

 

秋山  久保田さんは近世文学にはなじんでる わけだけど、私ははじめ

     からだめです。

 

 

久保田 やっぱり、拒否していらっしゃるじゃないですか。

 

 

秋山  いや、不勉強の食わず嫌い。

     平安時代の 『枕草子』 だって、あまり好きじゃない。

 

 

久保田  先生の 『枕草子』 嫌いは有名ですからね。

 

 

秋山   それほどでもない。

 

 

     けれどはじめから好き嫌いはありましてね、『古今集』 は好きだけ

     ど 『新古今』 は嫌い、といっては申しわけないけれど、どうもあま

     りなじめない。

 

 

     だからあなたから さんざんやっつけられてる。

 

 

久保田 そんな大それたこといっておりません(笑)。

 

 

 

 

 

                     11月12日 奈良公園にて撮影