日本人の宗教は「先祖と自然の崇拝」  | 人差し指のブログ

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『 日本人への遺言PARTⅡ 「和の国」 のかたち 』

渡部昇一 (わたなべ・しょういち) / 日下公人 (くさか・きみんど)

株式会社李白社 2017年1月発行・より

 

 

 

渡部 私はクリスチャンになりたてのころ、神父さんに就いてよく勉強しまし

    た。  議論もしました。

 

 

    それでわかったことは、日本の神道の本質は先祖崇拝である、

    ということです。

 

 

    でも、神父さんからは 「先祖崇拝はカトリックに違反することはあり

    ませんよ」 といわれました。

 

 

 

     では日本の仏教はどうかといいますと、仏教学者は別として、

    ふつうの人はやはり 「ご先祖さまを拝んでいます」 といいます。

 

 

    ですから私はクリスチャンになっても、神棚も仏壇も捨てないで改宗

    しました。

 

 

    傍(はた)から見れば、いいかげんな改宗かもしれませんが、

    日本人はこれでいいと思っています。

 

 

 

    東大の英文科の中野好夫という人がいました。

 

    中野さんの本を読みますと、先生のご両親は改宗してプロテスタン

    トになられたようです。    そして牧師さんになったのかな?

 

 

    そのとき神棚や仏壇を庭に投げ出して焼いてしまったと書いてあり

    ましたが、私はそういうのは好きではありません。

 

 

    やはりもっと常識的でなければいけないのではないでしょうか。

 

 

     宗教というものは、レベルは多少違うでしょが、世のインテリが 

    「おれはカントの 『実践理性批判』 が好きだ」 「いや、私はモンテ

    ーニュの人間学にずいぶん教えられるところがあった」 「おれの愛

    読書はフランシスコ・ベーコンの 『随筆集』 だな」・・・・というのと

    同じだと思うのです。

 

 

    人それぞれに思うところ感じるところがあればいいのであって、

    カトリックでも、仏教でも、神道でも・・・何でもいいと思います。

 

 

 

     私は孫の七五三だって神社でやりましたし、父も母も亡くなる前に

    洗礼を受けておりますが、山形の田舎では五十回忌もやりました。

 

    私の友人が住職をしている曹洞宗の大きなお寺で執り行いました。

 

 

 

    お坊さんが二十人ぐらいでお経を上げてくれるんですが、私の一族

    が十人ぐらい、いとこやいとこの子が十人ぐらいで、お坊さんの数と

    同じぐらいの参列でした。

 

 

 

日下 日本の宗教をいろいろ調べてみると、結局は先祖崇拝と自然崇拝

    のふたつに絞られると思います。

 

    そして、いつかそのうち悟ればいいと考えているんじゃないですか?

 

 

    わたしの友だちにプロテスタントの牧師の学校に行っている男が

    何人かいました。

 

 

    彼らは小むずかしい議論を始めるわけです。 

    そして啓示、つまり 「神からのお告げがあると、神が見えて悟りが

    開ける」 なんていってました。

 

 

    そんな彼らがいうには 

    「啓示は神がくださるもので、修業して得られるものではない」 と。

 

    そういいながら、毎日お祈りをしていました。

 

 

    そんな彼らが年をとったころ、「啓示はあったか」 と訊いてみたら、

    「まだこない」 って(笑)。

 

 

     それはそれとして、日本人が自然崇拝になるのは自然が美しいか

    らです。

 

 

    先祖崇拝になるのは、昔は食っていく手段がほとんど農業でしたか

    ら 「ご先祖さまが田んぼを開いてくれたおかげで、子孫は食えるよ

    うになった」 という思いがあるからでしょうね。

 

 

    その点、イスラム教徒の場合は砂漠ですから、厳しい自然に取り囲

    まれています。

 

 

    風がドッと吹いたら飢え死にしてしまいます。

    そういう環境では自然崇拝は起こりません。

    先祖崇拝にもなりません。

 

 

    どうしたって、「神よ、赦したまえ」 になってしまうのでしょう。

    それしかありませんからね。

 

 

 

 

                         7月9日 奈良市内にて撮影