西洋の辞書と「日本人の知識欲」 | 人差し指のブログ

人差し指のブログ

パソコンが苦手な年金生活者です
本を読んで面白かったところを紹介します

 

 

「 日本文化を問いなおす  渡部昇一対談集  

渡部昇一 (わたなべ・しょういち 1930~2017)

株式会社講談社 1976年7月発行・より

 

家元ヨーロッパの破産     安岡章太郎 ・ 萩野弘巳 ・ 渡部昇一  

 

 

 

 

渡部   珍現象だと思うのは、ドイツで 「グリム」 というのが、1854年、

      第一巻、出したんです。

 

 

      これは世界で最初の近代的な辞書です。

      ところが最終刊が完結して出たのが15年前です。

 

 

      100年かかってるわけです。

 

 

      完結したものの、第一巻は100年前ですから、どこにも揃ってい

      ない。

 

 

      体面上完結させたんですね。 ドイツの学会が。

 

 

      そうしたら三修社という出版社が全部総復刻やったんですよ。

 

 

      ドイツもどっちみち売れまいと思って、条件としては30部かなん

      かドイツにやれば復刻してもよいということ だったらしいです。

 

 

      ところが何百セットを刷ったところ、あっというまに売り切れなんで

      す。

 

 

      ぼくが申し込んだときにはもう 2セットしか残ってない。

 

 

      かくもへんちくりんな国なんですよ、日本は。

 

 

      OED (Oxford English Dictionary) これも膨大で、ぼくは個人で

      持っている外人を見たことがない。

 

 

      ところが大学院のぼくの英語のゼミナールに今年、出ている学生

      は、ひとり除いて、みんな持ってるんですよ。

 

 

      部屋は六畳ぐらいで。ある男なんか、本の置き場所がないから、

      寝るときはザザッと本を置いてその上に蒲団(ふとん)敷くんだっ

      て。(笑)

 

 

      こういうのは、いいか悪いかを別にして、ヨーロッパの発想法とは

      異質ですね。

 

 

安岡   異質ですねえ。しかし、おどろくと同時にやっぱり大和民族の優

      秀性も感じるな、話を聞くと。

                          「中央公論」 1975年5月号

 

 

 

 

                 新幹線から見た富士山 昨年12月24日撮影