『 痛快鼎談 2 僕らが考える 「日本問題」 』
日下公人 / 渡部昇一 / 竹村健一
株式会社 太陽企画出版 2002年1月発行・より
日下 中国の物事の考え方の根底には中華思想があります。
中華思想では、中華こそ文明・文化の中心だと考えます。
ですから、中国人にしてみれば、世界のトップが 「北京詣で」
をするのが当然であると考えているのです。
竹村 それは中国の歴史を見ればよく分かります。
日下 中国の歴史においては、中華文明の体現者である中国人が、
文化的に辺境の地である外の世界に足を運ぶということは、
よほどのことがないかぎりあってはならないことなんです。
ところが、中国の要人が日本には比較的よくやってくるでしょう。
それには二つの理由があるのです。
ひとつは 「天皇陛下に会えるのなら日本に行ってもいい」 と
考えているからです。
天皇はなんといっても中国大陸を一時は征服した人だから面会
するとハクがつきます。
渡部 そのことからも分かる通り、かつて天皇陛下が中国を訪問したの
は大間違いなんです。
日下 もっとも、中国側が 「北京に来てください」 としつこく頼んだわ
けですが。
竹村 何だか日本が誇れるのは天皇陛下だけみたいですね。
日下 いや、他にもうひとつあります。それが援助です。
渡部・竹村 (笑)
日下 ですから中国の偉い人が日本に来るのは 「天皇陛下に会うた
め」 と 「援助を引き出すため」 ということになります。
(略)
渡部 よく 「中国四千年の歴史」 といいますが、中国では王朝が
しょっちゅう交代しています。
今の王朝は 「中華人民共和国」 という新しい王朝なんです。
それに比べて日本の王朝は隋や唐以前から続いているのです。
日下 中国の要人は経済援助がほしいから来日するのですが、
日本に援助を請うのはしゃくだから、いろいろな戦術を弄するわ
けです。
まず、鄧小平が来日したときは、上海の漁船を何百隻も動員して
尖閣列島を包囲したわけです。
それで、鄧小平がしずしずと日本にくるときに、一斉に漁船が退
いたわけです。
竹村 そうすると日本は喜ぶわけですね。
日下 押しておいて、「もうやめました」 と退く。
それで恩を売るのが中国の戦略なのです。
そして、その戦術にはまって神経をズタズタにされ、最後に
「ああ、よかった」 と胸をなでおろすのが日本なのです。
奈良公園にて 昨年12月24日撮影